「民 際」 と 「共 生」 な 眼 で 世 界 の 中 の 日 本 に 思 い を は せ て ・・・

08 日本語って ほんま難しい 【にしゃんた こらむ】

外国から日本に来る人たちが真っ先にぶつかるのは、「日本語」という言葉の壁ですわ。観光客もビジネスマンも留学生も、みんなそう。日本語は難しいんです。漢字とかカタカナとか、色々あるでしょ。発音もそう。助詞を一つ間違ごうたら、大変なことになるやないですか。ほんま、素人には誤魔化しにくい言葉です。
僕も今まで、何十という失敗談があるんですね。今回は、その中から忘れられへんのを二つほど。

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日本語学校に通っていた頃の話。僕はお金が無かったんで、タクシーに乗ったんは二年間で一回こっきりなんですね。その日は何かの用事ですっかり遅うなって。どうしてもタクシー乗らなあかんかったんです。まだ下手くそやった日本語を操って、運転手さんに行き先を告げましてね。まぁ車は快調に走っとったんですわ。ほんで、目的地に着いたんで、「そこで降ろして下さい」。
ほしたら運転手さん、何故かビックリした顔で僕を見るんです。僕も日本語にまったく自信が無かったんで、身ぶり手ぶりを交えて、「ここやねん!ここやねん!」って何度も訴えたんですよ。せやのに、言えば言うほど困った顔して、「さっぱり分かりませーん」という様子なんですわ。結局、目的地をはるかに行き過ぎた地点から、トボトボと歩いて帰ったんです。
何が起きたんかは、後で判明しました。「ここで降ろして下さい」と言うてたつもりが、「お」と「こ」を間違うて、「ここで殺して下さい」と言うてたんです。驚くのも当然ですわ。僕も困ってんけど、運転手さんもたいがい恐かったやろなって思いますわ。スリランカ人に、いきなり必死な顔して「殺してくれ!」って言われてもねぇ。

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もう一つ。昔、留学生会館ちゅう所に住んでいた頃の話です。そこには、館長さんがいてね。すんごい面倒見の良い方やったんです。僕らはみんな館長さんを慕ってまして。色々な事を相談してたんですよ。
館長は住み込みではなく、夜になると自宅に帰らはるんですね。でもある晩、どうしても相談に乗って欲しいことがあって。自宅まで電話をかけたんです。
プルプル、プルプル・・・「はい、もしもし」。次の瞬間、身体が硬直しました。電話に出はったんが、館長の娘さんやったんです。美人で評判の人でね。そん時は僕も、年頃の男の子。胸がドキドキ高鳴りまして。

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襟を正して息を整え、自称"流暢な日本語"で「館長いませんか?」と切り出したわけです。ほんまはもっと娘さんとお話をしたかってんけど、緊張しててね。いきなり用件になってしもて。まぁそれは別にええんですけど、何故かいきなり電話を切られてしもたんです。僕もビックリしてね。
「おかしいな~。なんで切んのよ・・・」ボソボソ言いながら、もう一度電話をしてみたんですわ。今度はもっとひどいですよ。勢いつけて、「ガッシャーン!!」ですわ。僕も、何が起きてんのかわからへん。「電話壊れとるんかい?」とか思いながら、懲りずにもう一度挑戦してみたんです。そしたら、「もうかけないで下さい!!」と怒鳴られたんです。
もう、頭の中真っ白ですわ。正直な話、可愛い電話の声に、淡い恋心さえ芽生えかけていたんですよ。悲しくて、その夜は眠れませんでしたわ。

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次の日、館長に朝早うからに会いに行ってね。前の晩の事を伝えたんです。用があって電話したのに、娘さんに切られたってね。
「アッハハハハハハハハハッハハハハ」
次の瞬間、館長は大声で笑い出したんです。「そうか、君が昨日の"いた電"の犯人か!」ってね。
「娘は、いやらしい電話がしつこくかかってきたって、大騒ぎしていたよ」
「えー!? 僕、いたずら電話なんかしてへんですよ!!」
どういう事やらわからんままに、必死で弁解しました。ほしたら、ようやく館長が笑いながら説明してくれました。真相を知って、ひっくりかえりましたわ。
僕は日本語の「い」と「し」の使い方を勘違いして覚えていたんです。それで、娘さんに「浣腸しませんか?」というアホな提案をしつこく繰り返すはめになってたんですわ。娘さん! ほんまにごめんなさい! すんまへん!

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日本語って、たった一文字変わるだけで、全然違う意味になんねんな。身をもって勉強しましたわ。でも、こんな経験を繰り返してきたおかげで、今の僕があるんです。最近では、電話だけやったら日本人になりきる事ぐらい、どうってことないですわ。せいぜい「東北人が無理して関西弁喋っとる」と思われるくらいでしょ。
これから外国語を勉強される人は、どんどん恥をかいて頂きたいちゅうことですかね。この話の教訓は。

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