つよく、優しく、しなやかに、美しく ・・・「民 際」 と 「共 生・共笑(ともえ)」 な 眼 で 世 界 の 中 の 日 本 に 思 い を は せ て ・・・

14 Woman 【にしゃんた こらむ】

幼稚園から高校を出るまで、全寮制の男子高校に通っていました。野郎ばっかりと生活していたので、女性と接することは皆無に近かった。喋ったこともほとんど無い。
昔は澄ましている男が格好良い、ってことになってたので、余計に機会を失のうたんちゃうんかな。
結局、今になって記憶をたどると、喋ったことのある女性というたら、妹とおかんぐらい。女性のことなんか、知るよしもないですわ。

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女性。男と違って素晴らしいに違いない。想像だけが膨らんでいく。僕らの中で女性は、「神秘的」やった。手を合わせてもいいぐらい。
学校では、女性のお友達がいる奴なんて、ほんの数人。全校生徒がその数人の存在を知っていて、女性についての貴重な情報を教えてもらっていたんです。ラブレターなんか、みんなで無い知恵出しあって書いてました。
僕らの学校のグラウンドって、めっちゃ広かったんです。年に一度、何かのイベントで、近所の女子校が借りに来まして。その日は教室からみんなで覗くんです。女生徒たちを。鼻の下伸ばして。先生は「まだ早い! 今は勉強しなさい! 女の子のお友達は、大人になったら出来ます」って、えらい怒りましたわ。
やからこそ、日本に来た時は、女の子と友達になるチャンスを心待ちにしていたんです。

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日本語学校に通っていた時分は、毎日が新しい発見で一杯。日本語だけではなくて、街を歩くこと自体が勉強なんですわ。
来日して、まだ五ヵ月くらいのある日のこと。いつもの帰り道ではなく、新しい道で帰宅を試みた。ちょっとした冒険ちゅうのかね。そこで僕が見つけたものは、目をひく派手な看板ですわ。
辞書を片手に看板の内容を読むと、何と女の子を紹介してくれる、というような事が書かれていたんですわ。日本はなんて素晴らしい国なのやろうか! これは感動ものだ! 日本に惚れ直した瞬間でもありました。

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ドキドキしながらも気合いを入れた僕は、勇気をふり絞ってその紹介所を尋ねました。
ドアを入ってすぐの壁には、一覧表が貼ってあった。何の一覧表かというと、相手の女の子の職業一覧なんです。それが時間帯によって変わってくるらしい。
「受付」と書いてある所には、手を出し入れできるくらいの小窓がありました。何だかよく分からないけど、その時の僕には関係ないことやった。
「一時間で三千円です」
「ええ! お金がかかるんやー」
その当時は、すぐにスリランカのお金に換算する癖がありまして。スリランカやったら、初年給ぐらいの金額…。一番悩むとこやった。
学費のために大事に貯めたお金。でも女の子の友達は欲しい! 何故か両親の姿が頭をよぎる。お父さんお母さん、ほんまにごめんなさい。でも分かって欲しい、この気持ちを。

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受付でお金を払い、入会手続きを済ませた。いよいよですわ。たくさんある中の、小さな一室に案内されました。説明を求めると、「電話がかかって来ますからね、女の子から…」親切に教えてくれました。
部屋はたたみ一畳ぐらいの個室。深々と座れるソファーと、机の上に電話が一台。殺風景な空間やった。そして電話が鳴る。でも何故か、受話器をとっても話し中。他にもたくさん部屋があって、見知らぬ男たちと速さを競っていた、なんて知るよしも無い。
残り時間が少しという頃に、やっと電話がつながった。女の人や! 初めてお友達になる女の人やー!! 僕はろれつが回らなくなってしまった。緊張がピークに達していたんです。
気が付いたら、起立して受話器に応対してましたわ。それでも頑張って自己紹介するのが礼儀です。

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「に、にしゃんたです。スリランカからの留学生です」
「えーっ、スリランカってどんな所?」
「きれいなところです! 海がきれいで、緑がきれいで、果物が美味しくて、人が優しくて…」
日本語は習いたてなので、あんまり高度なことを言われへん。それでも僕は全力を挙げて、スリランカの説明をしました。
一つの質問が終わると、次の質問が飛んでくる。僕は辞書を片手に、この歴史的(個人史)な瞬間に向かい合った。彼女の質問はなかなか終わらない。僕に興味をもってきている証拠や! 嬉しかったですわ。
そして三十分ほどたった時。
「勉強がんばってや。さよなら」
と一方的に電話を切られてしまった。

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「???」
今のは、何やったんや?
大金を払ってスリランカのレクチャーをした僕が得たものは? よう考えたら、相手の名前も聞いてへん・・・。
ソファーに深く腰をおろして呆然自失。虚脱状態で帰宅。一気に疲労が出てきた感じやった。
その日を境に、スリランカに興味を示す女の子は嫌いになってしもうた。今はもう見当たらないテレクラも。

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その後、日本では彼女も女の子の連れもたくさん出来ましたが、スリランカでは相変わらずですわ。
女性とお話をするチャンスを求めて、一生懸命にアンテナを張ってんねんけど、成功したためしが無い。スリランカに戻るたびに、女性が神秘的なものになってしまいます。

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スリランカでは、新聞の三面が、結婚を希望する男女の自己PRコーナーになっているんです。
スリランカに資料を集めに戻った時、何回か出会っていた女性に「昼ご飯でもご一緒にどうですか?」って聞いたことがある。そしたら、「あなたは1、2週間で日本に行ってしまうけど、私はずっとここにいないといけないから」って断られました。
やっぱり、デートは結婚を前提にして誘わないといけないようです。
スリランカの女性とお友達になることは、これからもキビシイかな。

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