つよく、優しく、しなやかに、美しく ・・・「民 際」 と 「共 生・共笑(ともえ)」 な 眼 で 世 界 の 中 の 日 本 に 思 い を は せ て ・・・

18 留学生の長老 【にしゃんた こらむ】

僕が住んでる京都は、「学生の町」としても有名なんです。京都の総人口の一割が学生なんですわ。
留学生もめっちゃ多い。京都が大好きな僕は、この街にもっともっと留学生が集って欲しいなって思います。世界中に京都のことを宣伝してもらいたいしね。
でも、日本に留学することって、だんだん魅力的でなくなってきてるんです。

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僕が日本に来た最大の目的は、もちろん大学入学ですわ。でもそれは、単なる希望に過ぎなかった。そんな保証はどこにもなかったんです。理由は、もちろん能力的なこともあるんやけど、それ以上に問題やったんが、「ビザ」と「お金」ですわ。
日本語学校に入学したときのビザは、「就学ビザ」といって、僕が取得したときは、期限が6ヵ月やったんです。10月に日本語学校に入ったから、大学の入学試験まで1年ぐらいしかなかったんですわ。日本語がままならへん状態で、大学を探さなあかんかった。
そんなわけで、入学すんのが一番簡単そうな大学を受験しようと思いましてね。「留学生のための大学入学案内」とかいう部厚い本を必死で読んで、名古屋のS大学に狙いを定めたんです。
受験を申し込んで、書類審査は無事クリアー。試験当日は、連れから借りた革ジャンに、ネクタイを絞めて会場に赴きました。革ジャンで大学入試でっせ。何を着ていったらいいんか、まったく知識が無かったちゅうことですね。
初めて見る大学は、緑の多い広い敷地に、最新の技術を導入した施設があってね。不便な所にあってんけど、一目惚れしましたわ。

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試験終了後、しばらくして、合格通知が届きました。日本の大学に行けるんや! ってえらい喜んだんですけど、それもつかの間でした。周りから、「その大学、周りにバイトするところが全然あらへんで」って言われて、我に返りましたわ。
いちばん肝心なところが抜けてた。
大学側は、一年間の学費を何とかやりくりをしてくれたら、2年目からは奨学金を出しますよって言うてくれはったんですけどね。
1年間もたせるだけの貯金もあらへん。
もう一回、アルバイト環境に重点をおいて、大学を探しなおしました。
留学生の中には、学費を稼ぐために始めたバイトで、お金の魅力に取りつかれてね。それが本業になったり、大学に来なくなったり、本末転倒の奴もいてる。それでも、バイトしないと勉強も生活も成り立たないことは、まぎれもない事実なんです。奨学金もらって勉強できる子なんか、ほんの一握りやしね。

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ビザの問題もついてまわります。更新はだいたい4月やねんけど、留学生がいちばん緊張する時期ですわ。入国管理局に行って、審査官にペコペコせなあかん。
ビザを延長してもらうには、学校の成績証明書を提出する他に、今後一年間の生活力があることも示さなあかんのです。
留学生は、周りの連れらとつるんで、微々たる貯金を掻き集めましてね。それを、一人一人の口座に入れては、残高証明書をもらうんです。涙ぐましい工ですわ。

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僕はその後、バイト環境が良いっちゅうことも考慮して、京都にあるR大学の経営学部に入学しました。
大学では「日本的経営」を勉強しましてね。学部の総代として卒業したんですわ。でも今、仮に会社に就職したとしても、何もできへんと思います。
日本では、学問は学問。社会に役立つ人間は会社で育てるっちゅう風潮があるでしょう。大学で経営や経済を学んでも、会社で即戦力になるわけやない。それは、日本人学生も留学生も同じですわ。
日本では、日本人以上に留学生が「就職難」なんです。結局、自国へ帰るっちゅう選択肢しか残らへん。でも、僕らは母国で何ができるんやろうか?
帰国したって、単に「日本でDegree(学位)をとった人」とか「日本語が喋れる人」ちゅうだけなんですわ。

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日本政府も、留学生の伸びが止まったって嘆いてはる。中曽根元総理大臣が昔打ち出した、「2000年までに留学生10万人計画」も全然駄目。7万人どまりですわ。
それを打破するために、文部省は、英語での授業を奨励したりしてる。
なんでやねん!? 完全な勘違いやで。

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日本の大学の問題点として最初に挙げられるべきことは、実務的なことを教えていないということにあるんです。
本来学問は、社会の動きと切り離されへんはず。僕も今、大学で講義を持っているんですが、つまらん話を聞いてもらうより、教室の外に飛び出して、「見て」、「聞いて」、「歩いて」欲しいと思っているんです。
一応、14年間という長~い留学生活を送った、「留学生の長老」としての僕の意見ですわ。

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