21 カンドー シマシタ 【にしゃんた こらむ】
僕が生まれたんは、キャンディー<Kandy>という名の街。イギリスに植民地支配されるまでの、スリランカの都なんです。古都ですね。京都みたいなもんですわ。
この街の見どころは二つ。一つは大昔の城をお寺に建てかえた「仏歯寺」。お釈迦さんの歯を保管してるんです。もう一つは「ペラヘラ」っていう、7月に行われるお祭ですね。
●
ペラヘラ祭は、夜祭。電球付きの豪華絢爛な衣装を着た象たちが、街路を練り歩くんです。百頭以上の象が行列するんで、壮観ですよ。祭のクライマックスには、選ばれし象が「仏歯」を背中に乗せて、カーペットの上を威厳たっぷりに歩くんです。
キャンディーの住民は、ペラヘラ祭がアジア最大の祭や!! って豪語してはりますわ。僕も、この祭には毎年参加してました。
でも、スリランカの祭で行列に加われるのは、祭りのプロだけなんです。僕はボーイスカウトやってたから、ボランティアで見物客に水を配ってたんですわ。可愛い女の子ばっかりに配ってた記憶があります。そういうんは子どもの頃からやね。
●
せやから僕が京都に来た時、一番驚いたのは、祭に参加するのがプロではなくて、地域の住民やってことなんです。良いじゃないですか。自分たちで作り上げる、自分たちの祭って。
大学時代に住んでいた嵐山では、町内会から声をかけられて、嵯峨祭に参加してました。神輿をかついだりしながら、嵯峨の町内を廻っていく祭です。でも、出発した時のことは覚えてるんやけど、その後の記憶が無い。沿道で休憩するたびに、お酒が差し出されるからですわ。5月の行事ですけど、天気が良ければもう暑いくらいですから、アルコールがよう回りますねん。そこに住んでいた4年間、ずっと参加してました。大好きやったね。
●
それでも一番のお祭りは、やっぱり祇園祭ですわ。京都に住むようになってから、かれこれ7・8回は鉾を曳いてますね。大学の試験期間と重なってるんやけど、祇園祭の魅力には勝たれへん。それに、山鉾巡行の日って、僕の誕生日なんです。7月17日。京都をあげて僕の誕生日を祝ってくれてるような気になれるんですよ。いや、そんなん言うたら主催者にどつかれるけど。
それはともかく、日本三大祭って言われるだけあってやっぱ盛大ですよね。さすがに曳いてる最中は酒もらわれへんけど、最後に赤飯とビールもらって、機嫌よう帰ってますわ。
●
でも、最近気になることがありますねん。それは、いつまでも「外国人」としての感想を求められるってことですわ。見てみてくださいよ。新聞といい、テレビといい、祭のたんびに「外国人多数参加 日本文化に感動!」ちゅう感じでしょ。まあ、外国人の視点を通して、日本の文化の素晴らしさを再確認するのはいいことやけどね。
でも、それが迷惑になることもあるんです。去年の祇園祭。鉾を曳き終わって一息ついていると、新聞記者をやってる友達に出会って、よっ、久しぶりって感じで雑談してたんです。
「にしゃんた君、今日どうやった?」
「朝は天気悪かったけど、最後のほうは晴れて良かったです」
「いや、天気のことはどうでもいいんや。どんな気分やった?」
「僕、誕生日やないですか。去年一年間を振り返って、新しい一年のことを考えながら、鉾を曳きましたわ」
僕としては、久しぶりに会った連れとの会話やってんけどね。でも彼は「お仕事中」やったんです。
●
翌日。あるところで、また別の知り合いに会ったんです。彼は国際的な文化交流を支援するボランティアの窓口をしてくれてはる人なんですけど、いつもやったら仲良うしてくれるのに、どういうわけか機嫌が悪い。
仕事でなんかトラブルでもあったんやろかって、気を利かせて「大丈夫ですか?」って声かけてんのに、返事もしてくれへん。
心配になった僕が、繰り返し同じような質問をしてたら、突然、机の上にあった新聞を手にとって「何や、これ!」って怒鳴るんですわ。なんのこっちゃわからず、新聞に目をやると、昨日の新聞記者やってる友達との会話がそのまま記事になってたんです。僕としてはちょっとうれしい話やねんけど、何で怒られてんのんかわからへん。
彼はえらい怒りながら「京都にいたくないんか」「自分だけ目立とうとしてるやろう」「もう、鉾を曳いてもらわんでいい!」とか言うてくるんですよ。
冷静に話を聞くと、どうも新聞記者に個人的な話をしたことがいかんかったらしい。京都の文化をほめて欲しかったんですね。国際的な文化交流を支援している立場としては「今日は僕の誕生日なんです」とか言うてる僕が許し難いらしいですわ。
●
そら、僕かて初めて祇園祭に参加させてもろた時は、「異文化に触れた」っちゅう感動で胸がいっぱいになりましたよ。参加出来たことがめっちゃ嬉しかったし。祇園祭が大好きになったわけですよ。
そうはいうても、人生の半分を京都で過ごしているんやし、なんで「いち祭好き」として見てくれへんかね。今では僕も「夏になったら、大好きな祇園祭がやってくる!」って感じになっとるわけですわ。いつまでも「ニホンノブンカ、メズラシイデスネ。ワタシ、カンドーシマシタ」とか言われへん。
●
祇園祭を見たことがない日本人、一杯いるでしょう。今年はぜひ見に来てください。見どころを案内してあげます。一緒に祭を楽しみましょう。
コメントする