23 カルチャーショックな思い出 【にしゃんた こらむ】
長い留学生活を語る上で、カルチャーショックという言葉は欠かせへん。
僕、職場が山口県になったやないですか。長年慣れ親しんだ京都以外の土地で、こんなに長い期間を過ごしたんは初めてですわ。まだ2週間ですけど。
同じ日本でも、やっぱり違うんですね。沢山のことが。何と言っても、関西とは人のノリが違いますわ。浮いてる自分をひしひしと感じます。
そんな山口県にいると、今まで感じたカルチャーショックの数々が思い出されますね。
その中でも、留学する前、自国にいながらカルチャーショックを受けたことがあるんですわ。
えらい安上がりやけど、貴重な経験であることは間違いない。
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それは、中近東からの「お土産」にまつわるものやったんです。
GNPを基準に経済成長を計ると、スリランカは決して豊かな国ではありません。同じ仕事なら、国内より海外の方が高い収入を得られますから、多くの人が近隣諸国に出稼ぎに行くんです。
それでぼくの連れも中近東へ行ってましてね。そこから帰ってきたときのお土産で、色々ガラクタをもろてんけど、一つ目を引くものがあったんです。プラスチックの容器に入った液体ですわ。ふたを開けると、むっちゃ良い匂いがするんです。
書いてある説明はすべてアラビア文字。それが一体何なのか、どう使うたらいいか、さっぱりわからん。わずかな英語表記の説明文を発見して、懸命に読んでみたんやけど
「**********」
……馴染みの無い名前。
こういうときはやっぱ、辞書でしょう。どうやら「髪の毛を元気にする」って意味みたいやけど……もう、ここまでしかわかりようが無い。
辞書で得た情報に独自の判断を加え、翌日から早速使い始めることにしました。
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僕はこの「髪の毛を元気にする」液体を、毎朝髪の毛になすり付けました。しばらくするとカチカチに固まるんです。ちょっと変な気もしたんやけど、そういう物なんやろうって納得して、別に気にせーへんかったですわ。香りが最高やったから。
スリランカはいつもカンカン照りです。でも、スコールも多いんですわ。常夏の国ならでは、ですね。カルチャーショックは、そんなスコールのときに起こりました。
いつもの様に、髪の毛から漂ってくる芳しい香りにウットリしながら、街を歩いていたんです。そしたらスコールが始まりまして。
……突然、頭から白い泡がふき出してきて、顔や首筋に流れはじめたんですわ。
目に入るとむっちゃ痛いし、口に入るとニガイ。一緒にいた連れらは、僕の頭を見て笑い転げるばっかりで、助けてもくれへん。
僕はあまりの出来事に、呆然として立ちすくんでましたわ。
そんな事件があったにもかかわらず、素晴らしい香りに麻薬のように取り付かれ、この液体を使い続けました。最後の一滴までね。
日本に来てわかってんけど、「ヘア・コンディショナー」って、そういう使い方やなかったんですね。
いまだ国境を越えてない段階で、もうヒトネタあります。
僕が初めて飛行機に乗ったんは、16歳のとき。スリランカ人にしては早い方やと思います。日本に来る1年前。僕を乗せたその飛行機は、インドに向かっていたんです。初めての外国。初めての飛行機。ドキドキですわ。
スチュワーデスはみんなべっぴんで優しい。露出度の高いスカート。スリットから太股が見え隠れして、16歳の僕は鼻血寸前。それでも目はしっかり太股に釘付け。男子校の僕にとっては、条件反射ですわ。
乗客の子供をあやしている姿を見て「子供になりたい!」ってやきもち焼いたりね(ちょっと変態?)。
飛行機に搭乗して早々に、たくさんの事を学びました。シートベルトの絞め方でしょう。そして、事故が起きたときのライフジャケット着用の仕方。離陸も初めての体験でした。やはり恐い。悲鳴こそあげへんかったけど、必死に座席の肘掛けにしがみついてました。全身汗びっしょりですわ。
でもすぐに気を取り直したんです。飛行機といえば機内食。どんだけ食べてもすぐにお腹が空く食べ盛りの16歳。飛行機で出される食べ物はきっと美味しいに違いない。期待を膨らませていたんですわ。
優しい微笑を浮かべたスチュワーデスが、トレーにおいたものを一ずつみんなに配りながら近づいてきました。そして僕にも一つ。
あれれ? ロールだ!(ロールとは春巻の形をしたコロッケのこと。スリランカではポピュラーな食べ物です)
乗ってまだそんなに時間が経っていないのに、もう食べ物が出てくるなんて、さすが飛行機!! 内心いたく感激ですわ。そしてすかさず口へ。腹減ってるもんで。しかも、ロールは大好物。
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「あれ、硬いな。何やこれ?」
もぐもぐしながら横を見ると、それを広げて顔を拭いてる隣の人と目が合いました。
「あちゃー、恥ずかしい!」
食べ物に見えた物はなんと、おしぼりやったんですわ。日本やったら、どんなに小さいレストランでも当たり前のように出てくるでしょう。しかし、当時の僕にそれがわかるはずもない。
スリランカのレストランでは出てこーへんもん。こんなもん。
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まあ、色々あって、今の僕がいるんです。
山口県でどんなカルチャーショックに出会っても、「ヘア・コンディショナー」と「おしぼり」を思い出して頑張りますわ。
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