28 それは思い込みとちゃいまいか? 【にしゃんた こらむ】
僕は麺類が好きです。さらに言うと、うどんよりも、そば派ですわ。そばの方が、栄養的に豊富な気がするんです。
駅の立ち食いそば屋も大好き。これも日本の文化ですね。スリランカには、麺をすすって食べる習慣なんてありません。せやから、昔は舌を火傷をしたり、食べ終わるまでえらい時間がかかったりしたんですけど、いまでは人並みですわ。
京都の在来線ホームにある立ち食いそば屋は、もはや「行きつけ」です。電車が来るまでの3分位の間に、余裕でおそばを平らげる。便利ですね。
それだけやなくて、全国どこへ行っても、立ち食いそばを食べるんですわ。土地によって、出てくるそばの太さ・硬さ、お汁の味とかが違いますよね。土地柄なんか人柄なんかは解らへんけど、そういうのって楽しいですよね。
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この前、ちょっと京都へ帰る用事がありまして、新幹線の通る山口県の小郡駅へ。それで電車が来るまでまだ少し時間があったから、駅の立ち食いそば屋に寄ったんです。
きつねを頼みましてね。お昼近くやったんやけど、その日は朝から何も食べてへん。いつもはお店の人に話しかけたりするんやけど、その日はあまりにも腹減って声が出えへん。
出てきたそばに一味をたっぷりかける。本当は七味が好きやねんけど、一味しか置いてなかった。ちょっとかけすぎたんか、えらい辛い。顔を上げると、お店のなかには、おばちゃんと僕と、お客さんがもう一人だけ。シーンとしてるんです。僕はこういう雰囲気は苦手でして。サービス精神が旺盛やからか、なんか発言したくなるんです。
「この一味、辛いですね」
それまで、静かにしていたおばちゃん。急に嬉しそうな顔して、もう一人のお客さんに
「聞いた? 辛いんやって!」
とか言うんです。
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ちょっと不安になりましてね。
「僕、変なこと言いました?」って聞いたんです。ほしたら、
おばちゃん「だっておかしいもん」
僕「やっぱり……(やってもうた)すみません。どこですかね?」
おばちゃん「だって、辛い食べ物に強い国の人やないの」
僕「はあっ?」
南アジア出身であることを、このおばちゃんは一目で見抜いたんやろうか? ただ者やないぞ……などと思いながら、でもとりあえず、さらっと流します。
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電車が来るまでまだ時間があったんで、店内でゆっくりくつろぎました。その日はむっちゃ暑かったんです。京都の真似をして山口に都をつくった大内氏。地形まで京都と同じ盆地を選びはってね。おかげで、夏の暑さも京都そっくりですわ。
「おばちゃん、暑いですね」って言うたら、また笑われましてね。もう一人のお客さんに、「聞いた? 暑いんやって!」とか言うとる。
「僕、またおかしなこと言いました?」
「だって、暑い国から来たんやないの」
……いや、もちろん悪気はないと思うやけどね。こういう偏見は、改めてもらわなあかん。しつこくこの店に通って、おばちゃんがこりるまで、「暑いですね」「辛いですね」って言うたろうと思てますわ(笑)。
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この手の話はよくあるんです。例えばこれが冬になると、逆になるんですわ。「寒いやろう」ってね。そりゃ寒いですわ。暑いわけないっちゅうねん。
日本人の思い込みはとにかく激しい。代表的な思い込みは、「ガイジンはスポーツ万能」ちゅうやつですわ。道歩いていたら、わざとらしくサッカーボールとかバスケットボールが転がってくるんですわ。これが。
日本にいるガイジンは英語を話す、っていう思い込みもありますね。日本の学校には「外国人を道で見かけたら、英語で話しかけましょう」とか無茶なアドバイスをする先生が多いみたい。英語を喋る人なんか、ほんの一握りですよ。
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いまの日本は、ほんまに多様ですよ。いろんな文化や言葉がありますよね。さすがに、「日本は単一民族」とか言う人はもうおらんと思うけど、まだまだ心から理解してる人は少ない。
僕に出来ることは、そんなにない。でも、夏の暑い盛りに、七味たっぷりなそばをすすりながら、関西弁で「暑いわぁ」「辛いわぁ」
って、ぼやき続けますわ。
おばちゃんが、「ほんまやねぇ」ってかえしてくれるまでね。
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