34 スリランカの日系企業に入ってきました
日本の企業はどこにでも進出してるんですね。スリランカにもですわ。ようこんな遠いとこまで来たなって感心するぐらい。経済を教えているときは、グローバル! グローバル!って口癖のように連発している僕でも、いざ目の前で見てしまうと、何だか不思議ですわ。
スリランカも昔は、外国からの投資に対して閉鎖的やったんです。1977年くらいから、ウェルカム状態になったんですわ。農業や漁業だけでは世界と勝負できへん、って考えたんでしょうね。IMF(国際通貨基金)とか世界銀行の「アドバイス」を受けながら、工業化に向けて一気に動いてるんです。
イギリスに植民地支配されるまで、自給自足の暮らしを送ってきた国やったのに。グローバルって、ほんまはどうなん? って感じている人も、少なくないはずです。
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スリランカは、日本企業の誘致に積極的でね。日本に対して膨大な貿易赤字を抱えているからなんですわ。エビを輸出して自動車を輸入しているから、どうしてもアンバランスなんです。
さらに、スリランカにとって、日本は最大のODA(政府開発援助)提供国でもあるんです。そんな一方通行な関係をなんとか変えたい、という思いがあったみたい。コロンボ大学の学長は、「ODAの一割でもええさかい、投資してくれた方がありがたい」って言っています。
その結果、合計したら100件近くの企業が、日本からスリランカに入りました。でも、スリランカの期待とは隔たりが大きい。スリランカ政府は、最先端の技術を持った企業に来てほしかったみたいやけど、実際に蓋を開けてみたら、日本で競争力を失った中小零細企業が大半ですわ。しかも、半分がスリランカの観光業に目をつけた投資。
でも、大企業の進出もいくつかありましてね。近々、山口発で日本のアパレル業界を騒がせている会社も、操業開始するらしいですよ。
そんな日系企業の実態を知るため、現地で調査して回ったことがあるんです。
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何件かの企業を訪れて、一番面白かったんは、スリランカ人の日本人に対する印象。会社によって全然違うんですわ。「日本人は神経質」って言うたり「日本人はすごく優しい」って言うたり。彼らにとっては、日本人駐在員のカラーがイコール「日本人全体像」ってことになりますからね。
それでも、日系企業で働いているってことは、スリランカ人にとっては自慢なんです。いまはもう昔の話ですが、日本企業といえば、"Japan as No 1" って言われた時期もあったりしたからね。それに、雇用されている従業員にとっては、トップダウン式のイギリス的経営よりも、「平等」がモットーの日本的経営が魅力的に見える。日系企業を訪れるたびに、従業員から自慢されるです。「どうだ!私の会社の日本的経営は!」って
でも、自慢してくる人にはよう言えませんが、僕の調査結果は、「日本的経営なんか、スリランカの日系企業にはない」という結論なんです。
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「日本的経営とは、「3種の神器」(終身雇用・年功制・企業内組合)である」
1958年に、J.C.アベグレンって学者がそう言うたんをキッカケに、日本的経営の議論が始まったんです。議論の重要なポイントは、「日本的経営は海外移転できるか?」ということですわ。
いろんな人がいろんなこと言うてるけど、やっぱり行く先の文化が邪魔する傾向が強いみたいですね。スリランカで、何人かの日本人経営者に話を聞いたんですけど、スリランカ人に不満を言わはる方が多いですわ。会社より家庭。地域コミュニティーが大事。近所の人が亡くなっただけで、平気で1週間休む。などなど。まぁ、わからんこともない。
でも、スリランカ人の特性は、日本的経営が根付かない原因ではないんです。はっきり言って、それは日本側にあるんですわ。ポイントは以下の4つ。
1. 日本企業が日本的経営を知らない
2. 経営に長期的ビジョンがない
3. 日本の慣行を行う際の説明がない
4. 駐在員に能力がない
(ちょっと厳しいです。スンマセン!)
ひとつずつ、どういうことか、まぁ聞いてください。
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まずは1つ目のポイント。日本的経営では、社員を年功序列の平等待遇に基づいて雇用します。でも、スリランカに来る中小零細企業の場合、社員を雇うことはほとんど無いんです。労働力は外から求めるのが一般的。採用して、教育して、長期雇用する。なんてことは、そもそも行わないんです。
日本的経営っていう場合、自動車とか電化製品をつくる企業ばっかりが研究対象。その他の業種を採り上げて議論した研究は見当たらない。でも、スリランカの日系企業は、アパレルや陶磁器などがメイン。そもそも、いわゆる「日本的経営」なんか、最初から行っていない会社なんです。スリランカで突然それが生まれるはずが無い。
2つ目。長期的ビジョンがない。日本の企業がスリランカに進出する理由は、ただ一つ。賃金が安いことです。単純に安く製品をつくることしか考えてへん。だから、従業員を教育するってことには、あまり関心が無い。賃金がいちばん安いのがたまたまスリランカやったってだけで、もっと安上がりの国が見つかれば、そこに移るでしょう。ジプシー感覚ですわ。そんな環境で、終身雇用なんてありえへん。従業員の会社への忠誠心も、日本のようには育ちません。
3番目のポイント。日本では当たり前の慣行を、スリランカの企業でも行っている会社が多い。「提案制度」、「5S(整理、整頓、清潔、清掃、しつけ)」、「QCサークル(小集団活動)」、「ユニホーム着用」「早朝体操」などなど。でも、現地従業員に対する理論的な説明がなくて、「日本でやってるから」ってだけで、押し付けているんです。「朝の体操なんかしたくない」っていう現地の従業員は、単なる「怠け者」扱いされる。でも、彼らには日本人と違って、きちんとした言い分があるんです。
「スリランカは普段の生活のなかで身体を動かしていることが多い。朝の薪割り。薪運び。水運び。出勤も、長い距離を歩いたり、バスのタラップに命がけでぶら下がったり。ものすごく体力を使う。それに加えて早朝体操なんかやったら、働く前に疲れはててしまうやろ!」
……ごもっともでしょう?
でも、そんな言い分なんか聞く耳持たず、って感じですわ。日本のおかしな慣行は、何の説明もなく押し付けるんですけどね。これでは、経営側と現地の労働組合の間で衝突が起きてもしょうがない。スリランカ人の特性とは関係ないでしょう。
そして、4つ目。スリランカに駐在員を派遣する場合、初めての海外赴任という日本人がほとんど。当然、言葉なんか全然できへん。それに、日本の工場って、ほとんどオートメーション化されてるでしょう? 結構カンタンに工場管理できるんです。でも、スリランカの場合はそうはいかない。たくさんの従業員が手作業で働く。日本のマニュアル化された工場管理しか経験のない人が、まとめていけるわけないですわ。自分にリーダーシップがまったく無いくせに、「スリランカ人は協調性が無い」などと責任転嫁する日本人駐在員が、ギョウサンいるんです。
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「日本的経営」がもてはやされたんは、もう過去の話。「三種の神器」も崩壊しました。でも、日本企業はこれからも海外進出するでしょう。新しいスタイルで。
そのときは、もうちょっと現地の人とコミュニケーションをとって欲しいですね。違う文化・価値観を持つ外国人とはどうせ分かり合えないって、最初からあきらめてる日本人が多すぎる気がします。
日本の国語の教科書を開くと、「鉛筆の向こうに」っていうお話が載っています。日本で使われている鉛筆の芯は、スリランカで作っているってお話です。でも、1977年以降、スリランカが日本に輸出する製品は、どんどん増えています。ゲームセンターでヌイグルミをキャッチするゲームの、あのヌイグルミもそうなんですよ。
日本の町を歩いて、"made in Sri Lanka" を見つけたら嬉しい。遠く離れた土地で、母国の歩み知ることができるからです。日本との関係が変わりつつあることも。
そして、それを一生懸命につくっている人たちに、思いをはせたいです。
1. 日本企業が日本的経営を知らない
アパレルや陶磁器の企業が日本的経営をしていないという根拠がちょっとわかりません。この説明だと論文になってなければないということにしかとれないですが。
また、社員を日本に送って育てているところもありますが、育てれば辞めて違うところへ行ってしまうのは、スリランカも中国も他の国も同じ。これはスリランカ人だけではないですが、スリランカ人の特性のひとつ。
2. 経営に長期的ビジョンがない
日本企業だけに経営のビジョンは日本の本社中心になり、スリランカの工場自身が独立してビジョンを持つのはもともと難しいですよね。確かにこれはスリランカ人の特性とは関係がない。でも、もともとスリランカ人に長期ビジョンがある人が多いかといえば、正直かなり疑問なのですが。特に上級職の人に朝令暮改が多く、まとめきれずに、意見をすべて採用して方針が定まらないことが多いです。省庁がやたら多くて不効率なこともこれに起因していませんか。
トップダウンがきつく、下の人はものを考えるようには教育されてないような気がします。これもスリランカの教育の特徴のひとつでは。
3. 日本の慣行を行う際の説明がない
確かに説明不足の面もありますが、説明して受け入れるかどうかはやはりスリランカ人の特性にあると思います。それは日本人もゆずれないところはあるわけで、お互い様ですが。現にあなたもおかしな慣行と決めつけている。そもそも、運動不足解消のために早朝体操をするわけではない。すべてのことが理論づけれるわけでもないことなどはスリランカの慣行でも同じはずです。
4. 駐在員に能力がない
確かに語学の面で、海外事業展開しようという意味においては日本側の努力は当然です。ただ、スリランカも日本も母語の識字率が高い分、英語は苦手です。昔は知りませんが今のスリランカの大卒の方〃の英語力は日本人を馬鹿にできませんよ。英語ができることがえらいと思ってしまっている植民地根性はお互い様ですが。また、スリランカ人のリーダーシップの概念はとにかく、年齢が上で威張っている人に迎合する傾向があります。たとえば偉い人がその辺でゴミを拾っても、日本では尊敬しますが、スリランカでは逆にその人を身分の低い人とみるようになり言うことをきかなくなります。これは、スリランカ人の傾向の一つと感じます。このように日本的リーダーシップが通用しないこともあるわけで、それはスリランカ人の特性で、スリランカで事業する以上、それに合わせる必要があるのでしょう。