つよく、優しく、しなやかに、美しく ・・・「民 際」 と 「共 生・共笑(ともえ)」 な 眼 で 世 界 の 中 の 日 本 に 思 い を は せ て ・・・

36 公務員と女子大生 【にしゃんた こらむ】

山口の大学で教えはじめて、はや半年。だんだん、「大変な仕事についてもうたなぁ」って実感しています。これまではイチ留学生として自由気ままに生きてきたんやけど、いまは公立大学の専任教員。責任ある立場だけに、制約も多いんですわ。

今回はちょっと愚痴っぽいんやけど、この半年でため息ついたエピソードを。テーマは、「公務員」と「女子大生」。

まずは採用の辞令がでる直前の話。いきなり出鼻をくじかれた形ですけど、僕が経営に参加していた会社を、辞めろって言われたんですわ。「なんでやねん」って聞いたら、
「あなたが公務員になるから。公務員は兼業禁止なのよ」ですって。

……あ、そうなんですか。

その辺の決まりが、まだ理解できなくてね。この前も、「にしゃんた君。ちょっと来なさい」って言われて、学部長室に呼び出されたんです。

「あなた、講演を頼まれたら、事務所を通してって言ってるらしいわね」
「ええ」(だって、事務所が怒るもん)
「にしゃんた君は、公務員です。そのことを忘れては駄目よ」
「は~い」(えっ? 事務所に所属するのもあかんの? キビシイなぁ)

実は僕、山口ではかなりの有名人になってしもた。来てたった3ヶ月で地元の新聞やらテレビやらで採り上げられまして。準レギュラーで生中継レポーターなんかもやっとるんですわ。隣の島根県に行っても、「あ! にしゃんた!」って言われて、嬉しいやら、窮屈やら。

そんなワケで、よく講演の依頼も来るんです。研究室に電話がかかってきてね。多いときには、一日4本くらい。僕も本業は大学教員やから、できればその辺は事務所に整理してもらった方が嬉しいんやけど……。

「講演をお願いしたいんです。お仕事で」
「スケジュールさえあえば伺いましょう」
「日にちはコレで、内容はコレで……」
「いいですよ」
「少ないですが、3000円で」
「……はぁ」
 
もちろん、事情によっては「お金は一切要りません」でお話させて頂くこともあるんやけど、正直「安いなぁ……」って思いますわ。これも公務員やからしゃーないんやろか?

それでも、できるだけ講演の依頼はお受けしたいんです。僕の思いを直接伝えることができる、貴重な機会やからね。

ところで話は変わって、今度は「女子大生」。僕の大学って、実は学生の9割が女性。もともと女子大やってんけど、平成8年に共学へ移行したんです。せやから、まだまだ女子学生が多い。

僕は、中学も高校も男子校。大学も学生のほとんどが男。せやから、これはかなりのカルチャーショックでっせ。

いちばん気を使うのが、言葉遣い。大学での会話は、ほとんどが女子学生とのやり取り。男子学生で覚えているのは、たった一件。授業中にウォークマンを聞いていた奴に「教室から出て行け!」って追い出したんやけど、ホンマにそれだけですわ。

ゼミで起きた事件。一人の女子学生の研究発表があって、僕のコメントの時間がやってきた。学生がどれくらい真面目に取り組んできたかを判断して、ひとこと。

「こんなんじゃ、アカンなー」

次の瞬間、その子は烈火のごとく怒り出してね。いや、マジでビックリしましたわ。

「なんですか!『こんなん』って! 私が一所懸命に書いたのに、『こんなん』って言い方はないでしょう! 心外です!」

しまいには、「それって、先生色に染まれってことですか!」

……その言い回しは使い方が違うと思ったけど、怖いので突っ込めませんでした。

そんなに酷い言い方かなぁ? 僕は当たり前のように言われてきた言葉やけど……。

それはともかく、教員は率直な評価を伝え、学生はそれを基に自分のレベルを上げていく。それが大学のゼミのあるべき姿やと思っていた僕。ちょっと方向性を見失いました。

先輩の先生に相談したら、女子学生に多い反応らしい。君は間違っていないから、気にするなって慰められました。

あくる日、その学生が僕のところにやってきて、「先生、ごめんなさい。昨日は言い過ぎました」って謝ってきたのは、ちょっと嬉しかったけどね。

もう一件、大教室でのできごと。受講生は150人と多い。その講義に、12人の男子高校生がやってきた。オープンキャンパスってやつですね。

高校生が見学に来ていることを、受講生にも伝えたい。そこで「あなたたちは、今日は何しに来たのかな?」って尋ねたんです。でも、恥ずかしがるばかりで、返事がない。

緊張をほぐそうと、
「黒い兄ちゃんが先生やから、冷かしに来たのかな?」(笑)
「それとも、綺麗なお姉さんたちに会いにきたのかな~?」(爆笑)

笑顔がこぼれたけど、発言は無理みたい。しゃーないので「オッケー。じゃあ授業を始めます。今日は『地域通貨』を勉強しましょう」ってな感じで講義に突入。

まぁ、彼らのおかげで、いつもと違う雰囲気のなか、講義を進めることができました。

ところが、数日後。
同僚の教員が僕の研究室にやってきて、クレームをつけはじめたんです。

「にしゃんた先生。学生から聞いたんだけど、高校生に向かって、『綺麗なお姉さんたちに会いにきたんですか』って言ったらしいじゃないですか。それは問題発言です。多くの女子学生が、気分を害したらしいですよ」

……またやってもうたらしい。
「可愛い弟たち」にとっての、「綺麗なお姉さんたち」。なんか問題なんやろか? 大教室をかなり和ませたと思ったんやけどなぁ。

僕としては、小難しい「経済論」の講義やし、できるだけ楽しい雰囲気を生み出したい。今後のためにも、どういう言い方をすれば女子学生が気分を害するのか、率直に尋ねてみようと思いまして。

「前回の講義での僕の発言で、みなさんが気分を害したというお叱りを受けました。
今後、みなさんの気分を害さないためにも、反省しなければいけない。気分を害された方に率直に尋ねたいので、気分を害された方は、手を挙げてください」

誰も手を挙げない。

「どなたか、気分を害された方がいるはずです。気分を害された方! いませんか?」
……みんな、キョトンとしてましたわ。

うーん。誰かが他の先生に告発したからこそ、僕が怒られたんやけど……直接、僕に伝えることはできへんみたい。

僕の大学では当面、女子学生が多いでしょう。僕がもっと勉強して、女子学生の考え方を吸収するしかないようです。

そんなわけで、今年の夏休みの研究テーマは、急遽変更を余儀なくされました。

……仕方ないですよね?

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