「民 際」 と 「共 生」 な 眼 で 世 界 の 中 の 日 本 に 思 い を は せ て ・・・

46 遠野へ、河童を捕まえに 【にしゃんた こらむ】

この前、遠野に行ってきました。講演の依頼があってね。

「小さなところですが、ぜひ来ていただきたいんです」
「いいですよ」

場所も知らんくせに、ふたつ返事でOKを出してもうた。

岩手県の内陸、早池峰山(はやちねさん)・六角牛山(ろっこうしさん)・石上山(いしがみさん)という、いわゆる「遠野三山」に囲まれた盆地にある遠野は、名前どおり遠かった。人口はわずか3万人弱。城下町として発展して、明治のころは馬市で有名やったらしい。っていうか、柳田国男の『遠野物語』の舞台ですわ。誰でも知ってますね。

民俗学専門の安渓先生(山口の大学でお世話になってます)が、羨ましそうに「にしゃんた君、代わってくれ」って言うたほど。古い言い伝えがたくさん残っている、とても神秘的な町です。

「菊池順子です。にしゃんた先生、私を覚えてますか」

僕を講演に誘ってくれたのは、昔の教え子でした。と言うても、たった2時間半のお話をさせていただいた、たくさんの人のなかのひとり。しかも、ずいぶん前の話。本当は覚えていない……だけど、会ってみたらすごくかわいい。目を細めて笑う仕草が最高。

……ガゼン気分がノッてきましたわ!

その後、次々に地元の方と名刺交換する。「どうも、菊池です」「菊池と申します」「よろしく、菊池です」

いや、しつこい菊池さんがいたはったわけではないですよ。菊池という姓が多いんですわ。遠野には。

部長さんに課長さん、次長さんから係長さん、それがみーんな菊池さん。別の姓を名乗られると、逆に気持ち悪い。久々のカルチャーショック。

講演の方はなかなか好評のうちに終わりました。上司を説得して僕を招いてくれた菊池順子さんの顔をつぶさずにすみましたわ。

で、せっかくやから遠野に2泊することに。夜はずっと飲み会。そして昼間は、遠野を案内してもらってたんです。

霧に包まれた町のなかに、茅葺きの家々が並ぶ、幻想的な景色。そのなかでいまも息づいている古い古い言い伝え。お嬢さんとお馬さんの悲しい物語「北川家オシラサマ」。子宝の神様「山崎コンセサマ」。そして、姥捨て山の「デンデラ野」。

そのなかでも、僕の心を捕らえて放さなかったのは、「河童」ですわ。せやから河童がしょっちゅう出現するという河童淵まで案内してもらいました。

すると、なんとそこで目撃したんは、生野菜を竿の先につけて河童を捕まえようとしている人!!

昔、あったずもな。土淵の新屋ず家の裏にとっても深い淵があったど。ある夏の暑い日、その家の若い者が、馬の足を冷やしてやるべど、淵へ馬を連れでって、そのまんま遊びさ行ってしまったんだど。

そしたら、河童が出てきて、その馬を淵に引きずり込むべとしたずもな。してば馬たまげで、河童引きずったまんま、馬屋さ飛び込んだんだど。今度は河童の方がたまげで、馬の舟(飼葉桶)をがっぱりひっくり返して、そのなかさ隠れたずもな。

家の人たち、『なして馬ば(か)り帰って来たべ』と、不思議がって馬屋をのぞいて見たずもな。そしたら、舟がひっくり返ってぺっこな(小さな)手がみえだど。開けて見たっけ、河童だったずもな。

集まって来た村の人たちは、『この河童、いつもいたずらして、ろくでもねえから殺せ殺せ』って言ったけれど。でもよく見たっけ河童、手あわせていたったど。

ここの家の主人は、むじょやなと思って『これからは、ここの淵で絶対悪いことすんなよ』って許すことにしたんだど。河童も、言うことを聞いて、そこからは遠く離れた奥沢の淵さ引っ越したんだどさ。どんどはれ。

なんと地元では、「河童を生け捕りしたら1,000万円」って呼びかけが! 地元「遠野テレビ」のホームページでは、河童淵を24時間体制で観察してるんです。

ああ、ここにずっといたい。
せめて1週間でも……

だけど僕の携帯電話は早く帰って来いとジャンジャン鳴る。「スリランカ人を河童が連れ去った、とでも言うてください」と言い残して消息を絶ったろうかと思いましたわ。

生野菜を淵へ垂らしていた方に、河童の捕獲法を教えていただきました。

一、傷つくから、霞網とか釣り針等の罠で捕獲しないこと
一、捕まえたらすぐに「生のキュウリ」を与えること
一、河童の頭の皿の水は、乾かさないようにすること
一、河童には優しく接すること

「希少生物」やから、くれぐれも大事に扱わないとあかんみたいですわ。


●[河童淵を24時間体制で観察]から
 http://www.tonotv.com/html/livecamera/index.html
 へリンクしてください

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