つよく、優しく、しなやかに、美しく ・・・「民 際」 と 「共 生・共笑(ともえ)」 な 眼 で 世 界 の 中 の 日 本 に 思 い を は せ て ・・・

51 酒もタバコも 【にしゃんた こらむ】

もう忘年会シーズンです。アルコール漬けの日々、みなさん送ってはりますか? 僕の職場の同僚も、体のあちこちが悪いといいつつ、それでもガンガン飲んでます。肝臓の薬やら腎臓の薬やら、はたまた高血圧の薬を併用しながら。

日本では、お酒を飲むことが「あたりまえ」です。飲めないのも含め、「お酒を飲まない」ことは良しとされない。会社の大事な決定事項も酒の席で決まる、と言われるぐらい日本では飲み会が重要。腹割って話をするには職場を離れて酒を飲みながらっていうのが日本では常識(?)ですね。

一方、スリランカ。街には飲み屋もそこそこあります。でも、人口の70%が仏教徒で、そのほかの宗教であるヒンズーもイスラムも、お酒を飲むってことはあまり良しとしない。お酒に対してわりと寛大なのはキリスト教ぐらいですわ。

でも、そのキリスト教徒がスリランカで占める割合はほんの一部。せやからほぼ社会全体的に酒を飲むことが良くないと思われてます……っていうか、むしろスリランカでは飲まへんほうがカッコええんですわ。「お酒を飲まない」ことが、スリランカの社会で信用を得るためには欠かせません。

仕事で酒を飲みにいくなんてもってのほか。そもそもスリランカ人は、仕事とプライベートのあいだにきっちり線をひく考えの人が多い。就業時間が終わった後まで会社の人と仕事の話をするために飲みに行くなんて、考えもしないです。

そこらへん、日本とはずいぶん違いますね。日本では逆に、酒をくみ交わすことができない仲は、大したことないってところに繋がっていく。

……というわけで、日本での社会的評価を受けるため(!)に、いまでは毎日のように飲んでる僕。この時期、一晩に3つの忘年会に顔を出したりして、ふらふらになってます。

そんな僕にももちろん、いちおう酒とは無縁な歴史がありました。「あんなんどこがうまいんや」ってずっと疑問に思ってましたよ。アルコール初体験は高校生のとき。友達とふたりで飲みに行ったんです。

スリランカといえば椰子の実でつくった「アラック」っていう蒸留酒が一般的です。アルコール度45%ぐらい、ストレートだとあまりにも強すぎるから、コーラで薄めて飲んだことを憶えてます。なにもおいしいとは思わなかった。

それにそもそも、「酔う」っていう感覚が解らへんのです。スリランカの街なかにはヨッパライがいませんでしたからね。記憶をたどって、まっすぐ道を歩けてないおっちゃん(数少ない例です)を思い出して、お互いにまっすぐに歩けているかを確かめ合ったりしてましたわ。かわいいもんでしょ?

それがどうして毎晩毎晩酔いつぶれるような人間になってしまったかというと……それは日本にきてから、大学時代の部活のせい。

僕は大学で日本拳法部に所属してました。体育会です。すべての論理が「気合い」という一言に集約される世界。はっきりいってキビシイです。飲み会は本気で「潰し合い」ですからね(いまでは問題かもしれませんが、当時はそんなんあたりまえやったんです)。

先輩は「絶対的存在」。後輩はビール瓶を向けられるとコップを空にするのが常識。「押忍。いただきます!」腹から声をだして、ありがたくいただく。そして必ず空にする。そして「押忍。ごっつさんでした!」。

キケンになったらトイレへいって、むりやりもどしてくる。そしてまた席へと帰って空のコップを先輩に差し出し、「押忍。いただきます!」と言ってありがたく飲む。

……ごくごく、一般的な体育会系の飲み会ですわ。いやー青春ですね!

酒もそうですけど、スリランカで社会の信用をあやうくさせるもうひとつの要件は「タバコ」。スリランカにももちろんタバコを吸う人はいる。でも、あまり良しとされへん。日本はタバコを吸う人の天国ですよ。

外国から日本に来る人の、このタバコに対する反応は大きくふたつに分かれますわ。ひとつは「喜び」。他の国ではこんなに堂々と吸えないってことですわ。

海外から観光で来ていた女の人から、その人の国では女性は外でタバコを吸えないし、昔は吸おうものなら罰金まで取られたという話を聞いたことがあります。いまではトイレなんかで隠れて吸うたりしてるらしい。だから女性用トイレにはちゃんと灰皿を用意してるんですって。

そんな人に言わせると、何の制約もなくどこでもタバコを吸える日本はサイコーです。

もうひとつの反応は「おどろき」。日本のそんな喫煙者放置状態に、びっくりってことですね。もちろんその人の身体にもよくないし、複流煙の問題もある。いっこうに禁煙化の進まない国・日本は、世界中の反たばこNGOを束ねるNATTっていう組織から先日、栄えある第1回「マルボロマン賞」を受賞してましたね。

そうは言っても、最近では徐々に禁煙を進めている自治体や会社が現れてます。僕やって酒を飲んだときにタバコを口にすることもあるけど、やっぱり人の迷惑になるから禁煙を進めてほしいと思う。

そう思ったのも、先日こんなことがあったから。新幹線の席を予約したら、「喫煙車両しか空いていない」って言われて、しゃーないねって乗ったことがあった。もちろん、その車両に乗ってこられる方はみんな当たり前のように煙をふかす。まわりの人がむせてようと、咳しようと……僕がメンチきったって、そんなものは通じるはずもない。

新幹線って、禁煙車両と同じぐらい喫煙車両もあるやないですか。僕が思うに、本当はタバコあまり好きじゃないけど、喫煙車両しか空いていないからやむを得ずそこに乗っている人も多いと思うんですわ。

そんなこんなしているうちに、そこに1歳ぐらいのお子さんを抱いたおかあさんが来られて、僕の前の席に座った。そのお母さんもタバコを吸う気配がなくて、きっと喫煙席しか空いてへんかったからこの席になったんやろうなと思った。

でも、まわりはそこまで気を回す気配もないですわ。当たり前のようにふかすふかす。わりとまわりのことに敏感な僕は、こんな状態をほおっておいたらいかんという使命感に燃えた。とりあえず、隣に座って得意気にふかしているおっちゃんを捕まえて……

「すみません、子供がいてるでしょ。タバコをやめてあげたらどうですかね」
「だって、ここ喫煙車両やもん」
「なるほど、じゃあこの子はタバコを吸いたくて乗ってきてる、と……」

おっちゃんは半ば納得いかない顔しながらも「そうやな」と言って、やめてくれた。だけど僕がやめさせられたのは、そのひとりだけ。本当は立ち上がって、子供が乗っています、みなさんタバコをやめてあげてくださいって叫びたかった。もう少し若かったらやっていたやろうけどね……

最後に降りるとき、隣でタバコをやめてくれたおっちゃんに「すみません。ご協力どうもありがとうございました」って伝えました。
おじさんも、なんじゃこいつみたいな顔をしながらも軽く会釈をしてくれはりましたよ。

どうしても吸ったり、飲んだりしたい人は勝手にどうぞですけど、まわりのことも考えてくれたら、みんなが楽しい社会になるに違いないですね。

それはともかく、日本のお酒やタバコの事情、電話でスリランカのおかんに説明してもまったく信じてくれません。

日本は忘年会だの新年会だの送別会だの歓迎会だの、何かに理由をつけてお酒を飲む文化だってことも。僕も日本で夜ごと酒を飲んで酔いつぶれてますってことも。「この子は嘘をついて」って信じようとしないんです。

まあ日本にきたお陰で、うちのおかんみたいにずっとスリランカにいる人間には想像もできへんようなことを、身をもって体験できているのはイイコト……ですよね?

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