つよく、優しく、しなやかに、美しく ・・・「民 際」 と 「共 生・共笑(ともえ)」 な 眼 で 世 界 の 中 の 日 本 に 思 い を は せ て ・・・

59 人生居酒屋 【にしゃんた こらむ】

最近はまっているお店がありましてね。家から近いのもあって、木屋町のこのお店へ、週に数回は顔を出します。小さいカウンターとテーブルひとつだけ。わかりにくい場所にあるんで、お客さんは常連さんばかりですわ。

出てくる料理もユニーク。「よいしょ(揚げ餅)」とか、「糸引きマッキー(納豆)」とか。一番人気は「君だけそんなうどん」。卵の黄身と護摩だけで味つけしたうどんなんです。麺をたいらげたあとのお椀にご飯を入れてもらうと、これがまた旨いのなんのって。

メニューの種類は多くないけど、優柔不断の僕にとっては、逆に良い。

僕のおすすめはなんと言っても「お豆腐」。前山さんというお豆腐屋さんが、毎日つくりたてをお店まで届けてくれるんです。前山さんは、ついでに一杯ひっかけていくけどね。

このお店、冷蔵庫がカウンターの外側にあるんです。お客さんは、自分で冷蔵庫から豆腐を取り出して、マスターに渡す。マスターは、包丁で切り目を入れて、ネギとカツオ節を乗せて、醤油をほんの気持ちだけ垂らす。ものすごく、クリーミー。

「京都のことは、僕よりにしゃんたさんの方が詳しい」って、マスターは言う。実は、静岡出身なんですわ。京都に住んで15年たつのに、「上る下がる」とか、「東入る西入る」とかがよくわからんそうで、しょっちゅう迷子になるらしい。

静岡やと、北は富士山で、南は海。めっちゃわかりやすかったんですって。

京都には、ホームレスの人が、600人くらいいるらしい。実は、マスターもホームレスの経験があるんです。ギャンブルが原因。京都に流れ着いて、そこである人の助けがあって、このお店を出したんですって。

ところがこのマスター。いまでもギャンブルを続けているんです。でも、こだわりがあってね。競馬はやらない。理由は、当たるからやそうです(?)。

面白い名前のメニューが並ぶこの店。でもそれ以上に面白いのが、棚にところ狭しと並ぶ、ボトルキープの札なんです。このお店では、自分の名前じゃなくて、好きな言葉を書くんですわ。それを見ているだけでも楽しい。ボトルの持ち主を想像するのがね。

「亀には亀の歩きかた」
これは、京都大学の法学部を総代で卒業した男の子のボトル。勉強は抜群やのに、なかなかカノジョができない。シャイで、人づきあいも苦手。いままで勉強ばっかりに集中してきたから、他のことがおろそかやったんですね。でも、これから追いつくからねっていうメッセージが込められているんでしょうね。

「人生とんとん」
これは、最近あまりテレビでお目にかかることも少なくなったけど、昔は関西を席巻していた、ある芸能人の方のボトル。いまは地域密着型番組を主にやってはります。……あんまりコメントするのはやめときますわ。

なんだか、人ってみんな、それぞれストーリーを持って生きてるんだーって、この居酒屋では実感するんですよ。

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