つよく、優しく、しなやかに、美しく ・・・「民 際」 と 「共 生・共笑(ともえ)」 な 眼 で 世 界 の 中 の 日 本 に 思 い を は せ て ・・・

66 鴨川のおもいで 【にしゃんた こらむ】

僕にとっての鴨川。

それはそれは、多すぎるくらいの思い出があります。はじめて等間隔で座っているカップルを見たときは、カルチャーショックやった。見事ですね。あまりの見事さに感激して、本当に等間隔なのかを歩数で計ってみたりもしました。大学生の時分は、空手部の先輩に言われて、カップルの邪魔をしたこともあります。あのときはすみませんでした。

京都暮らしが長くなると、僕自身も鴨川で彼女とデートしたりもしましたわ。最近は照れくさいですけどね。自然と、年齢にあった鴨川の利用法をこなしている気がします。いまは、頭を整理せなあかんときなんかに、鴨川沿いを散歩しています。ふっくらしてきて気になっているお腹を凹ませるためにも、ね。

でも、僕にとって最も多い鴨川利用法は、酔っ払って川辺で寝ることなんです。そうすると、通りかかる人に指差されて、いろんなことを言われる。

日本に来てしばらくのころは、「カール・ルイス」。少し後は、「ベン・ジョンソン」。最近では、「タイガー・ウッズ」。または、「ボブ・サップ」。

まぁ、かっこいい人が多いので、悪い気はせーへんねんけど、先日、「あっ! タマちゃんだー」、と言われたときは、正直ショックでした。

昔、あるテレビ番組でディレクターから、「鴨川を三条大橋の上から眺めると、故郷のスリランカを思い出し、思わずスリランカの歌をうたってしまう」というシーンを撮影したい、なんて無茶なリクエストをされましてね。そのときはスリランカの歌を思い出せずうろ覚えの童謡をテキトーに歌いました。

バダギニ ウエラー マー ギヤカラ プトゥデ ゲタ
ミャナラー ウィー ティカック ドンナー マルラカター
ガンノー ノガンノー キヤラー ヒツニ マター
ミャナラダ プテェー キリドゥンネー マー オバター

(お腹を空かせたお母さんが米をもらいに息子の家を訪れた。息子が精米する前の米を量る様子を見て、お母さんは「息子よ、お前が小さいとき、おっぱいを測りながら飲ましたことがあったかい?」と心のなかで嘆いた)

とっさのこととはいえ、鴨川とは何の関係もない歌ですね。すんません。でも、仕送りのひとつもしてやれない、自分の親不幸ぶりを表現してたんかな。

思い出の多い鴨川。いったい、どこから流れ出ているんやろう、ということで、先日、鴨川の源流を探しに出かけました。連れの車の助手席に乗って、北区の雲ケ畑まで。その雲ケ畑のずっと奥の方へいったところに、岩屋山志明院があります。境内には、鴨川の源泉がわいているんですわ。

樹齢どれぐらいなんやろうと思わせる大きな樹木に、奇岩怪石も多い。滝もあって、修験の行場になっている。ここの渓流は雲ケ畑岩屋川で、岩屋橋の南で祖父谷川と合流し、出合橋で中津川と合わさると、鴨川になるみたい。ちょろちょろと流れる水流が、あんなに大きな川になるって、神秘的ですよね。圧倒されましたわ。

エッセイのために、デジカメで写真撮ったんですけどね。それを連れに見せたら、「山の神さんは怖いから、写真はやめとき!」って言われまして。ちょっとビビッてたんですわ。でもそのとき、運良く知り合いのお坊さんに会いまして、

「にしゃんた君は、仏教徒でしょう。大丈夫だよ。お釈迦さんは罰なんか与えないから」
「でも、山はお釈迦さんの管轄とちゃうんちゃいます?」
「大丈夫。山の神さんの怒りを抑えて、守ってくれるはず」

って言われまして、ひと安心。ただ、日本に来た僕は、いつしか日本人と同じように、臨機応変に都合のいい宗教を選ぶ無宗教家になってもうた。ほんまにお釈迦さんが守ってくれるかどうかは、あやしいですけどね。

岩屋山志明院のご住職の田中さんと少しお話ができました。彼の朝は、境内ですくった閼伽水(あかみず)を本尊に供えることから始まるそうです。

仏教では、寅の刻(午前4時ごろ)に、山水のせせらぎに花が咲くと言われています。その水が閼伽水で、罪悪不浄を清めてくれる優れものなんです。「閼伽」はサンスクリット語の "argha" が語源で、「貴重な」という意味ですわ。昔の人は、水に対する畏敬の気持ちを忘れへんかった。

山を降りてくる最中に、産廃処理施設に反対して、「鴨川の源流を守ろう」って垂れ幕がたくさんありました。昔の人の心をどこまで思い出せるか。これからの私たちの課題やろうなと思いますわ。

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