つよく、優しく、しなやかに、美しく ・・・「民 際」 と 「共 生・共笑(ともえ)」 な 眼 で 世 界 の 中 の 日 本 に 思 い を は せ て ・・・

74 茶碗虫 【にしゃんた こらむ】

初めて日本に来たときのこと。成田空港で食べた初めての和食は、僕にたくさんのことを教えてくれました。

赤いトレーに、小皿がたくさん並んでました。色とりどりできれいやなぁ、とは思ったけど、目の前にちょこんと置かれたチョップスティックをどう使って、どう食べたらいいのかわからない。

でもそんな僕に、きれいな着物を着た上品なおばちゃんが満面の笑顔で教えてくださった。お盆に何がのっているのか、丁寧にひととおり教えてくれる。ゆっくりゆっくりしゃべってくれたのが、すごくありがたかった。
ありがたかったけど、ゆっくりやろうと早かろうと、当時の僕には日本語はちんぷんかんぷんやったけどね。

そのとき、力強い味方になってくれたのが、飛行機内で知り合った、オーストラリアのトミー君。彼はなんと、和英の辞書を持っていた。辞書を駆使して、ひとつひとつ英訳してくれる。これは、ライス。これはフィッシュ。これはエッグ。ふむふむ。この辺はスリランカにもあるな。しかし、ひとつめの壁にぶつかりました。

「ソーヤ・スープ(味噌汁)」です。大豆はスリランカにもあるけど、汁で飲むのは初めて。しかもスープやのに、スプーンがない。おばちゃんに、「スプーン、プリーズ」ってお願いすると、手にとって飲むようにとジェスチャーで教えてくれた。

そうはいっても、スープの皿を手で持つなんてテーブルマナーに反します。小さいとき、親父にひっぱたかれた記憶がよみがえる。

でも目も前では、おばちゃんがしつこくジェスチャーを繰り返している。しゃーないから、いやいや従いましたわ……でも次の瞬間、アツーっ!!! いまなら、味噌汁は音を立てて飲むことを知ってますけど、当時の僕にはそれも当然マナー違反。その結果、おもいっきり舌を火傷しましたわ。

奮闘はまだまだ続く。生の魚の切り身(お刺身)は、最初からアウト。もしかして、日本人ってヘン??

まあ馴染みのないものを食べる必要はない。卵を食べたらええんや。当時、ゆで卵を額で割ることが、スリランカの男子高校で流行っていたので、トミー君に模範を見せることにした。

でも次の瞬間、目の前が真っ黄色に……そう、僕の額から生卵がダラーんと。トミー君は大爆笑。僕は落ち込んで顔が真っ赤になったが、幸い肌が黒いので、平気な表情に見えたらしい。

アカン。日本の食べ物は向いてない。あきらめかけたそのとき、デザートが目に飛び込んできました。白いプリンみたいなもの。スリランカでは、食卓に白いものがあったら、それはデザートに決まってる。やったー! デザート大好き!

でも一口食べたけど……うん? プリンではないな?? いったいこれは何ですか? おばちゃんに聞く。それをトミー君が訳してくれた。"bowl worm."

ワーム? 虫? 生魚どころか、日本人は虫なんか食べるんか? 当然、僕もトミー君もあきらめましたわ。いまでは茶碗蒸し、大好物やけどね。

最後に梅干を食べて涙を流し、日本に絶望した若きにしゃんた。いまではえらそうに、京都のグルメ番組の司会者やってますわ。洋食と和食とどっちが好きかって聞かれたら、それは間違いなく和食です。

この話の教訓は、初めての土地で初めての食べ物を食べるときは、とにかく常識やらマナーやらを捨てて、自分の舌だけに頼るべきやってことですね。きっと美味しいから。

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