76 そろそろ家がほしいな 【にしゃんた こらむ】
スリランカに帰ると、結婚しなさいだの、親不幸だの、両親の不満に耳が痛い。かつての同級生たちが家庭を持ち、落ち着き払って悟りをひらいたようにも見えるときには、「ほんまにこれでいいんかいな」と、思わず自問自答してしまいます。みんな立派な家を持っている。両親も「せめて日本に家を建てろ」といってくる。
僕が日本に来たのは、バブルのまっただなか。日本人が海外の不動産を買いあさっているときやった。日本の金持ちはちゃうな~って、いつも思ってました。
海外に別荘を買いはるタレントさんもすごいと思ったけど、近所にもすごい土地持ちがいた。京都に限らず、全国どこに行こうと、その方の名前が書かれた看板があった。その名前は「月極さん」。日本語学校に通い始めたばかりの僕にとっては、身近にいるいちばんの金持ちさんやった。
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時間がたつのは早いものです。僕も今年で来日18年。人生の半分を日本に過ごし、社会人になりました。夜の電車で窓の外を見ていると、沿線のマンションの窓からこぼれてくる光を見るたびに「ああ、ひとつの明かりにひとつの家族がいて、温もりがあるんだ」って、しみじみ思うんです。家族もさることながら、そろそろ自分の家がほしいって意識しだしたんです。
そこで、家を買うためにはどれくらいのお金が必要か、調べることにしました。京都のなかでいちばん好きな地域は、寺町の御池あたり。値段を調べると、どうも京都でいちばん高いところらしい。
そうすると、日本でいちばん高い場所を知りたくなった。それは15年連続で銀座中央通りの「銀座鳩居堂」前でした。なんと、1坪あたり4千万円近く(3,854万円)でした。バブル期は1坪1億円を超えていたんですって。1億円ですよ、1億円!
もちろん、日本の土地の値段は最初からこんな高くなったわけじゃない。いまから50年前と比べると、六大都市では90倍(全国平均65倍)、バブルのころは200倍(同82倍)にもなってるんですわ。それに比べて、一人当たりの国民所得は38倍にしかなってない。給料は、26倍にしかなってない。家を買うことが、すごい難しい国になってしまったってことやね。世界いち土地の値段の高い国は日本です。イギリスとかアメリカの10倍を軽く超えてます。
僕はちゃんと真面目に生きてることを、両親に立証できずにいたから、ここまでデータがそろえば説得できると、電話をかけたんです。「僕が小さな家にしか住めないのは、決して不真面目だからじゃなくて、日本が構造的にそうなっています。その証拠に……」って、先ほどあげた数字を説明すると、「日本はずいぶん貧しい国だね。早く帰ってきなさい」と言われてしまいました。
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両親は最近、スリランカのお隣の国、モルジブに旅行に行ったそうなんです。飛行機で1時間くらい。「モルジブでは、新しく家族をつくるから、家を建てる土地くださいって島の長に相談すると、タダで土地を分けてくれるんやで」ですって。やられた……と思いましたわ。そんなモルジブの例を引き合いに出されて、日本を悪く思われるのは、悔しいですね。
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