つよく、優しく、しなやかに、美しく ・・・「民 際」 と 「共 生・共笑(ともえ)」 な 眼 で 世 界 の 中 の 日 本 に 思 い を は せ て ・・・

77 節分にお化け!? 【にしゃんた こらむ】

2月の日本の行事といえば節分。スリランカではこんなものないです。畑に豆をまくことはあってもね。

聞いた話では、北海道なんかやと落花生をまくらしいです。北海道あたりは外が雪なので、殻つきやったら、まいたものを拾って食べてもどうもないやろっということらしいですわ。道産子の島田さんが教えてくれはりました。縁起担いでも、寒い地域では大事なカロリー源、食べ物を無駄にせえへんように、生活の知恵ですかね。

……ちゅうか、外にまいた豆は食べるもんなんかな。いろんな人に聞くと、家によって、地域によって違う。外にまいた豆は食べへんけど、家にまいた豆は食べるとか。連れなんかは、どうせまいたら掃除せなアカン、せやから一石二鳥、犬に食べてもらおうとドッグフードで代用しようとしてました……新しい文化の登場ですね。

ところでふつうは「鬼は外、福は内」っていうかけ声ですよね。でも僕が昔住んでいた錦の市場周辺では違った。「鬼は外、鬼は内」やったんです。ちょっと待って、結局鬼はどうしたらええのん? って思ってた。でも日本に来て、日本のことが少しわかってくると、格好つけて知ったかぶりしたくなるものです。素直に聞いたらすっきりしたやろうに。結局このことが長年の疑問やった。

やっと今年になってすっきり。「鬼は外」の「鬼」は鬼ですが、「鬼は内」の「鬼」は鬼やなしに「大荷(おおに)」なんですって。京都の商人さんは、こんなところにも縁起担いでる。こういう言葉遊び、日本では昔からよくあるんですね。これが発展すると親父ギャグになるわけですな。

去年は節分で有名な壬生に行ったけど、本当に人が多かった。せやから今年は、家の近所に行こうということで、向かったのは廬山寺。御所の東側の寺町通りにあります。ここは鬼がたいまつを持って踊る『鬼の法楽』で有名ですわ。

鼓の音とともに、火のついたたいまつを片手に赤鬼が舞台に上がる。続いて、緑鬼と黒鬼がそれぞれ斧と小槌をもって上がってきます。3人(匹?)は相撲のような四股を踏みながら、舞台の上を回る。そして、その後を行司さんのような格好をした方が弓と矢を持って出てきて、お祈りをした後、東西南北と天に向けて、矢を放ちます。

ふーん、これで終わり? いえいえ、まだまだこれからが本番ですわ。最後の最後に餅まきがあるんです。着物姿のかわいい女性(ミスなんとかです)も登場して、いっせいに餅をまきます。

しかし餅を拾うときのおばちゃんパワーには凄いものがありますね。おばちゃんたちはみんな「必勝アイテム」である帽子を手にして大立ち回り。僕は人ごみのなかで奮闘したものの、ひとつも拾えず。まわりを見渡したら、おばちゃんたちはみんなきっちりゲットしている様子です。なんというか彼女たちに、自分の甘さのようなものを教えられたような気がしましたわ。人生を振り返る瞬間でした。

ここではさらに、鬼の御加持っていうものがあります。体の具合の悪いところを鬼に伝えると、鬼がお祓いをしてくれはるんです。おばあさんやおじいさんが「このところ、膝が痛むんです」とか「去年どこそこを手術しまして……」とか伝えると、たいまつや剣を頭の上に振りかざしてお祓いをしてくれます。

僕は長い列の最後に並んだのち、何をお願いしたらええかって悩んでたら、ご住職さんが「じゃあ、日本での生活がたのしくすごせますように、ってことで行きましょう」って言われて、素直に「はーい」(でも体とは全く関係なかったやん……)。鬼さんは重労働やと思うけど、でも丁寧にひとりひとり、ちゃんとやってくれてはる。感心でした。

この日忙しいのは鬼さんだけじゃないです。僕もでした。夕方になると、祇園の岡見さんから「お化け見においで!」ってお声がかかったんです。

カーテンが少し揺れるだけでもバリバリにビビってしまう僕は、そんな明るい声でお化け見にこいって言われても、行きたくないですわ。でもよう聞くと、これもまたどうも違うらしい。で、そこのお茶屋さんの二階に上げてもらうと、すでに舞の最中。舞妓さんが踊ってはる。

腰を下ろして、舞を見ていたら、踊ってはるのは、どこかで見た顔ですわ。真織ちゃんです。真織ちゃんとは、1年ぶりぐらいです。舞妓さんにならはってすぐのときやったから、もうずいぶん板について大人の雰囲気でした。

この真織ちゃん、僕と顔を合わせた最初のひとことは、「デリシャス(おいしそう)」やったんです。僕を指差しながら。何のことか悩んだんですが、どうも、ハンサムってことを言いたかったらしいです(え……ちゃいますか?)。まあちょっと天然ボケの子でして、面白い。

そんな真織ちゃん、いまはせやけど踊り終わってからの接待もちゃんとしてはる。まだ18歳なのにしっかりしてるなあ。なんて思ってたら、お座敷遊びが始まりました。「とらとら」やら「ベロベロ」やらです。歴史と伝統に則ってコンパをやってるって感じかな!

で、肝心な「お化け」ですけど、次にやってきたのが、怪しい集団。なんと舞妓さんや芸子さんがいろんな衣装やらカツラやらお面やらつけて出てきはったんです。そして、寸劇をやってくれはった。いつもおとなしく、しおらしくしている彼女たち、でもこの日はずいぶんコワれてはる……。

良く見たら、お茶屋さんのおカミさんなんかも今年は新撰組に化けてはる。これが「お化け」やったんですね。祇園のカーニバルみたいなもんです。たのしいですね。

で、この「お化け」、よく聞くと祇園だけの風習じゃないそうですわ。昔は吉田神社(左京区:これまた節分で有名)などでも、節分の日は境内に、「お化け」がたくさんいたらしい。幼い女の子が娘の格好をすることが多かったらしいですけどね。

お化けになることは、悪い鬼を化かすためのカモフラージュやったり、自分と違う格好をすることで厄除けをねらったり、また子供が娘の格好をすることで良縁を願うためやったり、お年寄りが若い格好をすることで若返りを願ったりという意味があったんですって。ついでに言うと「お化け」は、仏事でもなく神事でもなく、京都の民衆の風俗として広まったもので、昭和40年代ぐらいまでは盛んやったらしいですわ。

いろんな姿に化けた格好がおかしくて、楽しく笑ってその笑いで悪いものを追っ払う、という意味もあったらしい。節分に食べる太巻き寿司も、食べるときに口を大きくあけた顔が滑稽やから笑って……っていうのと一緒やね。そして、太巻き寿司の風習はまだまだ最近のこと、一方「お化け」の歴史は長いことも勉強しました。

来年は僕も化けてみよう。何にしようかな。せや、僕は舞妓さんになろう。決定。いずれにしても、今年はしっかり厄払いができた。今年羽ばたく準備はこれでオーライ! 鬼さんよろしくさんどす。

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