81 日本語は難しい! 【にしゃんた こらむ】
前にも言うたかもしれませんが、こう見えても、僕は日本語能力試験の1級持ってます。日本に来て1年で合格したんです。最近の受験者に聞くと、どうもいまは難しいらしいねんけど……昔は簡単やったんかもしれへん。でもこの前、「下手な日本人よりは上手ですね」って喜んで良いかどうか複雑な気持ちになるお褒め言葉をいただきました。
まあやっぱり、日本人離れしたこの顔をみると、「日本語は難しいでしょう」って言われることはひとつの運命ちゅうかなんちゅうか。まあ、そんな感じですわ。その質問にひとことで答えたら、「日本語は難しいです」
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日本語って言うてもいろいろなんですね。方言もそうです。この前、鹿児島に行ったんですけど、面白かった。「よかにせ」って言うたら良い男って意味で、「よかおこじょ」って言うたら良い女っていう意味らしい。いくら日本語能力試験1級持ってるって言うても、「さっぱりわやや」の状態です。
西表島では、あなた「普通語」(普通の日本語のことです)うまいねーって言われて自分のなかで日本語に対する新しい発見をしたような気がしましたわ。方言もさることながら、昔の人たちの位によっても言葉なんかが違ったらしいですね。
もうないものやと思ってたけど、昔はお公家さんだけがつかった言葉なんかが、いまも普通の日本語に混じって残ったりしているらしです。町屋の坪庭には手水鉢があるねんけど、手水(手洗い)っていう言葉はどうも公家さんらがつかっていた言葉らしい。ほかにもたとえば、おつむ(頭)とか、おこた(炬燵)とか、ぐじ(甘鯛)とか、そうらしいです。……なんてエラそうに言うてますけど、僕にやってもちろん苦い歴史もあります。
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日本にきたころの僕は、日本のこと、とくに日本語を勉強した。そのときはほんま、胸を張って言えるぐらい真面目でした。いつやって片方のポケットには二つ折りにしたノートとボールペン、もう片方には辞書が入ってました。新しい単語を見つけては、辞書で調べてメモってね。まあ、あとからそれを読み返したかっていうと必ずしもそうではなくて、気休めみたいなところもあったけど。
これは、かれこれ15年ぐらい前の話(そんな前から日本におったんか!って自分にツッコミ入れたくなります)。当時は大学生、嵐山に住んで、新聞奨学生をやってました。意外とお金が貯まりまして、4年で300万円ぐらいかな、学生でですよ。いまでは懐かしい思い出です(……社会人のはずやのになんで貯まらへんのやろ)。
で、僕が新聞入れを担当していた場所のひとつに銀行がありました。直売所の近所にあったから、僕もそこで定期貯金さしてもらってたんです。銀行にとっては小金持ちの大事な留学生顧客やった……と思う。
ある日のこと、なんかの用事で銀行に行ったものの、3時ぎりぎりに入ったから店内にいる状態で入口とかも全部閉められて、でもソファーで待っていた。カウンターなんかもカーテンされたりしてて、なかをのぞけへん。けど、向こうの会話まる聞こえです。たわいもない話が続いてましたが、しばらくするとちょっと会話の種類が変わるじゃないですか。
「○○課長、ダイテてください」
「○○さん、シテ」
「ヤッテください」
え? え? 何がなんだか分からなくなった僕は思わずポッケから辞書を取り出すも、やっぱりちょっと昼間から使うような言葉じゃないです。なんちゅーても子供やったもので、この会話を聞いて放心状態になった覚えがあります。前まで楽しみやったのに、それからっというもの、なんか恥ずかしくて、カウンターに座ってはる可愛らしい女性をまっすぐに見られへんようになりました。
でもね、それからたいぶん経った後日、銀行に就職した連れに聞いて僕も知りました。そのやり取りは実は、業務中の略語やったっていうことを。「ダイテって言うのは、代金取立手形」で「ヤッテっていうのは、約束手形」で「シテって言うたら支払手形」……変なことを発想していた自分が別な意味で恥ずかしくなりました。聞くは一瞬の恥、聞かずは一生の恥っていうのはこんなことを言うんやろうなと思ったりしたわけですわ。
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それにしても、日本語は難しい。最近、芸能界の友人ができました。そしてまた、使っている日本語の種類が違うんですわ。ギョウカイ言葉っていうらしい。会ったら、夜中であれ「おはようございます」。寿司は「シース」。5万円は「ゲー万」、タクシーは「シータク」……
これを気に、僕ももうひとつの日本語、ギョウカイ言葉を覚えた方がええんやろか。日本語は難しいと言いますけど、ほんまその通り。バリバリむずかしいですわ。
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