つよく、優しく、しなやかに、美しく ・・・「民 際」 と 「共 生・共笑(ともえ)」 な 眼 で 世 界 の 中 の 日 本 に 思 い を は せ て ・・・

87 いまだ続く名前の悩み 【にしゃんた こらむ】

僕は「外国人登録証明書」の常時携帯を義務づけられています。「常時携帯っていうけど、外国人の関取はどうすんねん! ふんどしにはさむんか!」って怒る人もいますわ。この証明書に、小さい字でエイリアン(Alien)って書いてあるのもおもしろい。外国人っていう意味やねんけど、僕らの世代はどうしても、よその惑星からきた人って感じしますよね。伝わり方っていうか、感じ方は、やっぱり気持ち悪い。

このカードに、僕のフルネームが書いてあります。Nishantha Jayashinghe Arachilage Thusitha Devapriya。ほんま言うと、にしゃんた、っていう部分は、いちばん最後にくるんです。しかし、カードには名前の次に苗字、そしてその他の順番に書くことが決められている。英語にあわせとるんです。日本語では先に苗字やのに、何でわざわざスリランカ人の僕が日本で英語表記の順番に合わされなあかんのか、理解に苦しみます。

僕、2年ほど前から、帰化の申請をしているんです。でも、なかなか作業が進みません。用意せなあかん書類が多いんですわ。妹の出生証明書に結婚証明書までださなあかん。自宅周りで聞き込みまでされてますからね。なかでも、僕にとっての最大の問題は、名前なんです。平仮名の「にしゃんた」を名として使えても、苗字が見つからない。JATDのローマ字は、もちろん日本では受け付けてくれません。かといって、日本語に変えたら、ジャヤシンハ・アーラッチラーゲー・トシタ・デーワップリア。長いっちゅうねん。

この前、印鑑証明書をもらいに、市役所にいったときの話。若い職員が応対してくれた。紙を見るなり彼は不十分な点があると指摘してきたわけです。

「申請者のところにフルネームを書いてください」

通称名だけでは不十分らしい。訂正して、再提出。でもその若い職員のカレ、まだまだ不満あるらしい。

「併記名も書いてください」

すでに、小さい枠から余裕で3倍ははみ出てます。堪忍袋の緒が切れる直前やけど、ぐっと我慢して小さい字で名前を書く。何とか書き終わったときに、カレは止めを刺してくれた。サイン(署名)欄を指さして、

「ここに、フルネームを書いてください」

……ちょっと待ってくれや。サインとフルネームはちゃうで。

「証明書一枚のために、何でこんなことをさせるんですか」
「……といいますと?」
「あんなー。名前をひとつ書いたらわかるでしょ、誰が申請者ってことぐらい。登録番号も書いてあるんやし、間違いようがないやん。名前の欄こんなに小さいくせに、あほみたいに何度もフルネーム書かせて、嫌がらせですか!」

……カレは、どもった声で「失礼しました。ご自身の名前を書くことが苦痛だとは知りませんでした」

カレの理屈は分からないでもない。たまたま僕の名前が長かった。確かにこれは僕だけの悩みです。他の人には関係がない。でもこんなこと、やってられへん。そんなわけで、帰化する前に素敵な苗字を考えることにしたんですわ。

先日、京都の文化に精通しているある先生と一緒に仕事をしました。僕は先生の大ファンで、会うたびに京都のしきたりや由来などを教えてもらってるんです。そこで、苗字について先生に相談することにしました。

「先生、僕に日本の苗字を下さい。帰化したいんです」

非常に謙虚な方で、恐縮されながらも、「分かりました、一週間下さい」とおっしゃった。そして一週間後、一枚のファックスが届きました。

------
ご苗字の命名の件
前略 何かとお世話になっております。ご依頼の件ですが、JATDの意味やスリランカ、京都、日本、武道、佛教、神などをキーワードに考えてみました。気に入っていただければ幸いです。

【紅】(くれない)
「紅」は最も格の高い水引の色です。一見黒光りする上品なもので、手に水をつけると手が真っ赤に染まります。また、名香のひとつでもあり、スリランカの名産紅茶をも連想できると思います。日本に帰化されても、スリランカの父母や先祖を忘れないためにも「紅」をいう苗字は如何でしょうか。他にも浄徳、寿海、永徳、大岩、天宮などが思い浮かびますが……以上

なるほど。紅茶にちなんで紅か。素敵やな。そう思って、急いで画数を数えました……あちゃー、ひとつ足りない。友人に借りた姓名判断の本によると、画数は奇数が良く、しかも23画であれば言うことないらしいんです。中黒を入れて「紅・にしゃんた」ってどうやろ、とか友人に相談してみると、「女の子らしいで」とか「売れない芸人みたい」とか、「紅といえば、豚やんけ」とか、せっかく先生が考えてくれたのに、評判悪い。

そんなわけで、別の恩師にも相談してみることにしました。いまでは定年退職している元大学教員の恩師ご夫妻が、僕の自宅にたまたま遊びに来てくれたんです。

「ふむ。早速考えてみよう」と言ってくれました。
色々考えた結果、最後に結論として上がったのは、「三条」。画数的にもばっちりです。三条大橋は、僕がよく希望や不安を胸に鴨川を見下ろしていた、縁の深い場所。

それから、知り合いの弁護士さんにも相談してみた。
「スリランカの国を表す漢字ってないの? フランスは仏国、アメリカは米国って感じの」
「錫蘭(セイロン)ですわ」
「それがいいんちゃう?」

いまのところ、「三条」が優勢です。三条にしゃんた。どうですか? ほかにいいアイデアがあれば、ぜひ教えてください。

コメントする

お仕事のご依頼などは...

マネージャー

下中(しもなか)迄

■E-mail■

info@nishan.jp

■電 話■

06-6886-1175

■携帯電話■

090-6670‐1020

■F A X■

06-6886-1176

お問合せフォームはこちら

2011年12月

        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31