つよく、優しく、しなやかに、美しく ・・・「民 際」 と 「共 生・共笑(ともえ)」 な 眼 で 世 界 の 中 の 日 本 に 思 い を は せ て ・・・

90 立ってするのは男だけ? 【にしゃんた こらむ】

スリランカの実家のトイレ、いまでは大工さんがきちんとつくってくれた水洗便所なんですけど、子供のころは親父が近所の人たちと一緒になってつくった、ただのデカい穴でした。臭いがもれないように、しっかりした蓋がついてました。10年たっても一杯になることはないほど、深い穴ですわ。そうは言ってもそろそろあふれんで!というぐらいになると、親父がまた近所の男たちを呼んで、新しい大きな穴を掘る。そのころには、前に使っていたトイレの
大きな穴の中身は土に帰っていて、臭くもなんともない。

スリランカでのトイレ事情ですけど、実は女性だけでなく、男も座りションをする(ような気がする)んですわ。それから、紙で拭くだけでなく、水で洗うんです。右手で水を注ぎ、左手で洗います。最後には、石鹸で両手を洗います。日本のような寒い気候のところで水を使うと、お尻が凍えてしまう。寒いところは紙で拭く文化が発達して、暑い国では水で洗うという文化が発達したんかもね。日本にウォシュレットブームが来たとき、なんだか、スリランカの方が進んでいたような気がしましたわ。

一方、その日本のトイレ。初めての僕にとっては、カルチャーショックもありました。最初に驚いたのは、和式便所。どっちが前でどっちが後ろか分からない。日本人になりたい一心で、日本に来たその日から、水の代わりにトイレットペーパーを使い出した。最初は、拭くだけの人間をバカにしていたのもあって、大量にトイレットペーパーを使って、気が済むまで拭いていた記憶があります。

つい先日も、日本のトイレに驚かされましてね。北海道に行ったときのことです。初めての北海道。勉強になるものが多い。

小樽を観光しようとしていた僕に、ひとりの友人ができました。たまたま乗ったタクシーの運転手、安川さん。「僕と友達になってください」と、彼から言い出しました。「もちろんです。よろしくお願いいたします」。彼は、美味しいお寿司屋さんに連れて行ってくれたり、メーターを止めて小樽から札幌まで車を走らせてれたりしました。外国人の友達ができたって友達に連絡して、夜には大宴会が開かれたり。いやー、楽しかったですわ。

翌日。安川さんは、「小樽が経済的に潤っていた時代を教えてあげたい」と、旧青山別邸という大豪邸に連れて行ってくれました。大網元だった青山家の二代目、青山政吉が大正12年に完成させた別荘ですわ。当時の建築費は約30万円で、新宿伊勢丹デパートの建築費が約50万円だったって言うから、相当なもの。積雪の多い北海道では珍しい瓦葺屋根もあれば、あちこちに施された木彫り、漆塗りの床に柱、大きな墨絵や大襖絵。そこらじゅうに贅を尽くした、建物全体がひとつの美術品みたいなものですわ。にしん漁で賑わったその時代の小樽の繁栄ぶりがうかがえます。

こんな豪華な別荘を建てようと言い出したのは、三代目の青山政恵さん。彼女は17歳のとき、山形県酒田市の本間家邸宅に行ったそうです。そのときの本間家は「本間様には及びもないが、せめてなりたや殿様に」と言われるほど、日本一の大地主やった。というわけでお宅も豪華。で、父親の政吉さんが別荘の建築にとりかかったときに、政恵さんは「あの本間邸以上のものを小樽に建ててやろう」と決心したらしいです。

話が長くなりましたけど、この旧青山邸のトイレに驚かされたんです。なんてったって、大理石でできてます。どっしりとした立派な靴もありました。「厠下駄」です。こちらの素材は陶器。豪勢ですわ。それに、政恵さんの部屋にも、専用のトイレがある。そちらも見学すると……なんと! 立ちション便器があるじゃないですか! 一緒にいた安川さんに、

「政恵さんって男ですか?」
「男のような女性だったとは聞いてますけど……」
「??????」

どういうこっちゃ? よくよく聞くと、意外な答えが帰ってきました。昔の女性は、立ちション便器を使ってたんですよ。いまでも田舎のおばあちゃんは、後の割れたズボンを履いて、立って用を足すことがあるんですって。確かに、他のトイレでは便器に向かって下駄が置いてあったのに、政恵さんの部屋のトイレの下駄は、逆の向きに置いてあった。江戸時代には、まだまだ便器は男女兼用。それは、明治政府が欧米化を進めるころまで続いていたらしい。

いまでは、立ちションは男の特権になっています。明治維新で、女性はちょっと損をしたような気がしました。

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