つよく、優しく、しなやかに、美しく ・・・「民 際」 と 「共 生・共笑(ともえ)」 な 眼 で 世 界 の 中 の 日 本 に 思 い を は せ て ・・・

[dig] TV スペシャルに出演です! その1 【にしゃんた こらむ】

「まだ、仮の話なんですけどね。8月30日、飲みに行ったりせんと、予定空けておいてくれません? もしかしたら、お仕事お願いするかも」

[dig] で僕のエッセイを担当してくれているTくんから微妙な電話がかかってきたのは、8月5日の夜遅くのことでした。

1週間後。僕がそんなことスッカリ忘れていると、またTくんから電話が。
「やばい!エッセイの締め切り忘れてた!」いつもの催促の電話やと思って、恐る恐る受話器を取る……

「この前の電話、覚えてます? 実は8月30日に、[dig] TV のスペシャルを放送することになったんですよ。それで、番組のリポーター役が必要なんやけど、にしゃんたさん適任ちゃうかと思って。どうですかね?」

なんと、NHK出演の依頼やった。しかも、生放送らしい。これはえらいコッチャ。テレビの世界も結構アバウトやなぁ……なんて、ノンキなことを言ってる場合ではない!

久しぶりのテレビ出演。ちょっと気合を入れようと思いましてね。いや、僕の身体のことなんですけど。

最近、僕の自伝が出版された関係で、新聞なんかに写真を載せていただく機会が結構あったんですわ。それを見るたびに、落ち込んでたんです。関西学生ボディービル大会に大学代表として出場していたころの引き締まったボディは、見る影も無い。あっちこっちの毛を全部剃って、小さいパンツ一丁で、ステージでポーズをとって、
「ナイスポーズでーす!」
と叫ばれていた、あの栄光の(?)時代。

ちょうどそのころ、糖尿病のクレー先生(エッセイ#0037「甘い紅茶の向こうに」参照)が、生活改善に挑んでました。毎朝5時に起きて、1時間くらい散歩するんです。一念発起した僕も、先生の早朝散歩にご一緒させてもらうことに。必要最小限のもの―─短パン2本に、白のTシャツを2枚、パンツ2丁に、パソコンだけ──を持って、先生の部屋に転がり込んだんです。

朝方の3時に寝ても、5時には絶対に起こされる。好きなお酒も、太りやすいビールは断って、ワインだけにした。夏にビールを飲めないのは、はっきり言って地獄でしたわ。

番組の内容もぜんぜん分かってへんのに、カン違いした僕の「準備」はまだまだ続く。

ボディだけではなく、衣装にも気合を入れなあかん。センスの悪い僕は、連れと大阪へ繰り出した。それで「普段はちょっと着られへんやろう」ってな服を、とりあえず2着購入。しかも、放送はおそらく秋だろうと計算して、秋服を……よう考えたら生放送やった。夏服はバーゲンやってたのに。結局5万円近くも投資を……(泣)。

日本での研究期間が終わり、お土産を買いあさっていたクレー先生が、値段を聞いてひっくり返った。彼の一言が忘れられへん。「unusually expensive!(異常に高い!)」

Tくんからの電話で、番組の内容が次第に明らかになってきた。コンセプトは、[dig] webと同じ、「関西の若い才能を発掘する」こと。でも、ちらっと参考までにと出演者の情報を教えてもらってるとき、僕は電波の悪いところにいましてね。そのせいで、
「司会は、中村玉緒さんと堺屋太一さんに決まりました」って聞こえたんですわ。

堺屋太一? 僕が大学で経済教えているからって、まさか経済討論でもやらせる気やろか? それはやばいぞ!

……にしても、いったいどんな番組やねん?
謎は深まるばかり。

本番の一週間前。リポーターとしてVTRロケに行くことになりました。担当ディレクターは、もちろんおなじみTくん。

「ユニークな現代アートの作家がいてるんですよ。お人柄はまじめなんですけど、なんだか不思議な感じの方です。決まりの台本なんてナシで、一緒にアトリエに出掛けていって、彼の作品で楽しく遊びましょう」

いよいよ出番だ!

アーティストの名前は、山宮隆さん。彼のアトリエは、高槻市の田んぼのど真んなかにあった。「現代アート」っていうと都会のイメージがあったから、ちょっとビックリ。もともと寒天をつくっていた小屋を借りて、アトリエにしているそうです。

僕の自然なリアクションを撮りたいと考えたスタッフは、挨拶を済ませると、ぶっつけ本番で撮影に突入。何度かテレビの仕事はしたんですけど、こんなことは始めてですわ。何が起こるか、予測がつかへん。

そんな訳で、先入観の無いサラの状態のまま、アトリエに突入!

入った瞬間、男の人がデカい歯車に挟まれてます……これは、ナニ?

「どうしたんですか?拷問されてますの?」

その男の人が、山宮隆さん。第一印象は、若い兄ちゃんって感じですわ。話してみると、僕より3歳下の30歳。まあ、同年代ですね。

普通の人やったら、いきなりガイジンが突入してきたら動揺すると思うけど、びくともしない。目に力がある人でした。自信がある証拠ですわ。なんでも、キリン・コンテンポラリー・アワードっていう大きな賞を受賞したアーティストらしい。でも、ほんまに優しくて気さくな兄ちゃんでしたよ。

山宮さんが挟まれていたのは、その名も「チャップリン式健康機械」というアート作品やったんです。細い椅子にうつ伏せになって、巨大な歯車が、足の裏から背中までをマッサージしてくれる。薦められるまま、僕も挑戦しました。ちょっと勇気いりましたけど、今日の僕はテレビのリポーター。薦められて拒否するなんて、ありえません。

正直、最初はちょっと変な感じやってんけど、だんだん気持ちよくなってきましてね。自然と「おぉっ……」って、ちょっとエッチな声が出てしまいましたわ(カットされてたけど)。ほら、人に背中を踏んでもらったりするじゃないですか。あれに近いですね。慣れたら、ホンマに気持ちよかった。

そんな感じで、アトリエの作品を全部体験!オンエアに出てた以外にも、面白い作品が山のようにありましたわ。ただ、真夏っていうのもあって、空調設備なんて無いアトリエは蒸し風呂状態。みんな汗だくで撮影しとったんですよ。近くの自動販売機まで何回も往復しながらの撮影。いま考えたら、よう頑張りましたわ。

滝のような汗が一瞬で引いたんが、「ギロチン式健康機械」ですわ。あれは、ほんまに怖かった。細い椅子に今度は仰向けになって、上からギロチンの刃が落ちてくるのを待ち受ける作品なんですけどね(脳が覚醒して、精神の健康が得られるらしい)。

刃が落ちてきたとき、高槻市に僕の悲鳴が鳴り響きましたわ。健康どころか、間違いなく寿命が縮んでますね。腰が抜けたみたいになって、最後に山宮さんの手を借りて立たせてもらいました。

撮影後、スタッフもギロチンに挑戦してみたんです。カメラマンさんはさすがに平気な顔で面白がってたけど、怖がりのTくんはずっと目をつぶっとった(意味あらへんやん)。そして音声さんは、最後の最後まで断固拒否……でした。

山宮アートを、町の人たちはどう受け止めるだろうか? 試してみたのは、風の流れを音で表現するアート作品「エアロカリオン」。

風車と鐘が合体した機械を背負って、近所に繰り出しました。いちばん面白かった反応は、「それ、どこの国の楽器?」って質問されたことですね。そら、謎の外国人がいきなり現れて、背中にエアロカリオン背負ってたら、そう尋ねてみたくなりますわね。

でも、街の人の評判は上々。通りかかる車も、わざわざスピードを緩めて、こっちに手を振ってくれた。嬉しかったですね。犬さんの評価だけは、かなり低かったけど……。

撮影が終わると、いくつかの作品をお借りして、NHK大阪放送局に帰りました。台本なしのロケは、自由に動き回れて気持ちよかったですね。出来上がったVTRは、僕なりに山宮さんのアートと人柄を伝えられたと思ってます。山宮さんも喜んでくれてるといいけど……。

それにしても、何でもアートになりますね。芸術って、ほんまに幅広いですわ。その山宮さん、いまはコンピュータのプログラミングに力を入れてはるんです。コンピュータとアートの融合を目指してはるんですって。
次の作品が待ち遠しいですわ。

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