読売新聞>編集手帳>スリランカから来たにしゃんた君
読売新聞>編集手帳>スリランカから来たにしゃんた君
1998年5月24日朝刊
▲ 高校を卒業すると同時に、J・A・T・D・にしゃんた
君は故国スリランカを飛び出した。憧れの日本への留学
だったが、後先のことは頭にない一種の冒険でもあった。
▲ ポケットには片道の航空券と、父が自宅を担保に入れて
工面してくれた七万円があっただけ。以後も仕送りは一
切なく、京都での学生生活を支えるため新聞配達のアル
バイトが始まった。
▲しばらくは不審な目で見られ、子どもたちは「ゴリラ」
と黒い肌を指さした。が、屈託のない明るい笑顔で、や
がて「新聞やのお兄ちゃん」と呼ばれ、町内会の祭りや
運動会に誘われるようになった。
▲冬に薄着で配達する姿を見かね、路地に一人で暮らすお
ばあさんは手作りのはんてんをくれた。接骨院や歯科医
院ではいつも「出世払いでいい」と言って、お金を受け
取ってもらえなかった。
▲来日から十一年。今は奨学金を受けながら大学院で経営
学の勉強を続けるにしゃんた君が、内外学生センターな
ど主催の「留学生アルバイト体験文」コンテストで最優
秀賞を受賞した。
▲先週末、東京での授賞式で、にしゃんた君は、本国の通
貨危機で苦しむ留学生仲間への支援を呼び掛けた。金銭
的にはもちろんだが、お金に替えられない支えの大切さ
も、彼の体験は教えている。
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